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1枚の正方形の紙を、折ったり、開いたり、膨らませたりすることで、平面からさまざまな「顔」が生み出される。タレント・俳優の松尾貴史さん(60)は、折り紙の手法を用いて人面を表現する、「折り顔」作家としての顔を持つ。造形のモチーフとなる顔は、有名人、身近な人物、歴史上の人物、想像上の人物など、多岐にわたる。紙の風合いや色、大きさも実にさまざま。こんなにも表情豊かな「折り顔」が、1枚の紙からつくられていることに驚く。「光の国の人」「部屋の主」「毎度おなじみ流浪の人」「みぞうゆうの傲慢」など、作品についたタイトルもユニーク。一つひとつの作品を見つめていると、なんだか向こうから話しかけてきそうな感じがする。5月に作品集「折り顔」を発表した松尾さんに、「折り顔」作家となるきっかけや作品への思いを聞いた。
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松尾さんが「折り顔」をはじめることなったきっかけは、小学4年生までさかのぼる。
小学校の帰り道、神戸の「さんちかタウン」にある本屋をいつものように通り抜けようすると、保育社のカラーブックスというシリーズの本を見つけた。クルクル回るスタンドに並べられていた本を眺めていると、そのなかに、折り紙作家の河合豊彰さんの本があった。
「能面の『般若』や『翁』とか、仏像の折り方なんかが載っていて、その本を買って帰ったんですね。ただ、当時の僕の読解力ではなかなか折り進まなくて、子ども心に残念だなあと思ったんですけど、翁の面はなんとか折れて、そうか、これと似たような折り方したらいいのかなあ、なんて思っていたんです」
その後、大阪芸術大学でグラフィックデザインを専攻した松尾さんは、造形実習などで紙を扱うことが多くなった。ある日、レザックという、皮のような風合いのある紙を見て、「これで折り紙折ってみたら面白そう」と思いつく。昔、買った本を引っ張り出してきて、再トライすると、今度は折ることができた。
「それなら、次は自分で折り方を考えてみようと思ってやってみたのが、映画『スター・ウォーズ』の『ヨーダ』だったんですね」