折り方としては、わかりやすい例でいうと、折り紙の鶴を折るときにしっぽとあたまをつくりますよね。あのとんがった部分を、鬼の角にしたり、画家のダリのヒゲにしたりするわけです。

 目元なんかは、折ったところをいったんふくらませてからつぶしたり、さらにかぶせて折ったりすることで、線が入ったり、しわになったりして、紙に表情が生まれてくるんです。ふんわり有機的にしておいたほうが、表情ができるかな、という気がします。

――折りづらい人、折りやすい人、というのはありますか?

 やっぱり、特徴のある人のほうが折りやすいです。あとは、男性のほうが折りやすいですかね。女性を折ろうとすると、やっぱり曲線をやわらかくしたくなるんですよ。曲線をやわらかくしようとしたら、折る回数を増やさなくちゃならない。そうなると、折り方が複雑になるか、しわくちゃになるか、どちらかですから……。

 もう25年くらい前に、丈夫な和紙をもんでしわをつけた「もみがみ」という紙で黒柳徹子さんを折ったことがあって、そのときの個展を黒柳さんが見に来てくださったんですが、「ワタクシ、こんなにしわくちゃ?」とちょっとムッとされてて(笑)。「いやいや、そういう紙なんですー」と返事したんですけど……それは本当にたまたまです。

 ただ、いまは似せるということ自体はそんなに楽しくないんです。もっと表情とか、質みたいなところで、見る人がイマジネーションをふくらませてもらえるようなものをこの先は目指したいですね。

 以前、日本画家の千住博さんに、「誰の顔っていうんじゃないのを折ってみたらいいんじゃない? 羅漢像とかどうかな」って言っていただいて。同じようなものをたくさん折るのは大変だよなあ……なんて思いながら始めてみたんですけど、実際に折ってみると、意外と楽しくて、無心になれるんです

―それが、『紙羅漢』と呼ばれる作品群ですね。

 緑を基調にした紙で折っています。森林にいっぱいいる妖精のようなイメージにしようかな、と。これから数をもっと増やしていこうと思っているんですけど、1体折るのに、だいたい2時間ぐらいかかります。いま15体折ったところで、いずれは500体、五百紙羅漢を目指したいですね(笑)。

 漠然と、この折り顔、外国の方が見たら、どう思うのかなと思っていたんです。いつか、海外の――パリの裏路地でも、ニューヨークのソーホーとか、トライベッカみたいなところの小さな画廊なんかで個展ができたらなーというのは夢ですね。

 という話をしているうちに、いつのまにか「折り顔」が完成。同行した編集者Iさんの顔となった。

 この5月に発表したセカンド作品集『折り顔』が、東京・銀座の森岡書店にお目見えする(9月15~20日まで)。この作品集には、これまでに折られた色とりどりの「折り顔」たちが紹介されているが、その置かれている空間も実にシュールである。

「違う環境のところ、思いがけないところに、唐突に折り顔がある、という違和感を楽しんでいただけるといいのかなと思っています」と松尾さん。「折り顔」の実物も展示されるので、その質感や表情などを味わいに出かけてみてはどうだろう。

(構成=文庫編集部・山田智子)