安倍晋三首相が辞任の意向を固めて8月28日、首相官邸で会見を開いた。その様子を全文掲載する。

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安倍首相:猛暑が続く中、国民の皆様には、コロナウイルス対策、熱中症対策、ダブルの対策に万全を期していただいておりますこと、国や地方自治体からさまざまな要請に対して、ご協力をいただいていることに対して、心から感謝申し上げます。コロナウイルス対策につきましては、今年の1月から正体不明の敵と悪戦苦闘するなか、少しでも感染を抑え、国民の命を守るため、そのときどきの危険のなかで最善の努力を重ねてきたつもりであります。そのなかで残念ながら多くの方々か新型コロナウイルスにより、命を絶たれました。お亡くなりになられた方々のご冥福を心よりお祈り申し上げます。今この瞬間も、患者の治療に全力を尽くしてくださっている医療従事者のみなさまにも重ねて御礼申し上げます。

本日、夏から秋、そして冬の到来を見据えた、今後のコロナ対策を決定いたしました。この半年で多くのことがわかってきました。三密を徹底的に回避するといった予防策により経済活動との両立は十分に可能であります。

レムデシビルなど、症状に応じた治療法も進歩し、40代以下の若い世代の致死率は0.1%を下回ります。他方、お亡くなりになった方の半分以上は80代以上の世代です。重症化リスクが高いのは高齢者や基礎疾患のある方々であり、一人でも多くの命を守るためには、こうしたみなさんへの対策が最大のカギとなります。冬に向けてはコロナに加え、インフルエンザなどの流行で発熱患者の増加が予想されます。医療の負担軽減のため、重症化リスクの高い方々に重点を置いた対策へ今から転換する必要があります。まずは検査能力を抜本的に拡充することです。冬までにインフルエンザとの同時検査が可能となるよう、1日20万件の検査体制を目指します。

特に重症化リスクの高い方がおられる高齢者施設や病院では、地域の感染状況などを考慮し、職員のみなさんに対し、定期的に一斉検査をおこなうようにし、高齢者や基礎疾患のある方々への集団感染を防止します。医療支援も高齢者の方々など、重症化リスクの高いみなさんに重点化する方針です。新型コロナウイルス感染症については、感染症法上、結核やSARS、MARSといった入院感染症以上の扱いをしてまいりました。これまでの知見を踏まえ、今後は政令改正を含め、運用を見直します。軽症者や無症状者は、宿泊施設や自宅での療養を徹底し、保険所や医療機関の負担軽減を図ってまいります。コロナ患者を受け入れている医療機関、大学病院などでは大幅な減収となっており、国民のために日夜ご尽力いただいているにもかかわらず、大変な経営上のご苦労をおかけしております。経営上の懸念を払しょくする万全の支援を行います。

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