もうひとつやっかいなのは、イデオロギーの問題で、原発に関しては、全く話し合いにもならない状態になっている。反対派の人は何があっても反対。推進派という人が何人いるのか知りませんけど、その人たちは「トリチウムは海に流す」となっている。じゃあ、反対派の人はどうするかって言うと、アメリカでやっている、モルタル固化というモルタルで固めてしまうやり方を提案している。モルタルで固めると40~50年もつとも言われているけど、じゃぁ、それやるのに、誰が金を払う?モルタルで固めたものを置いておく土地を誰が買収する?ってことになる。

 モルタルで固めるのは、海に流すよりももっとお金がかかる。ということは、それって、現実的ではないんですよね。2年後にはタンクは満杯で、さらに海水に処理水を流すには2年間の準備期間が必要なんですよ。そのシステム作らなきゃいけないから。だから、福島の地元紙とか地元番組では、そのことを今取り上げているんだけど、全国には全くそんなニュースは聞こえてこない。

 だから、現実的なことを言うと、まさに今なんですよ。どうするかってことを今決めないと、水はずっと、40年、50年って、流しながら処理していかなければいけない。

 原発の基礎知識として、東京電力福島第一原発は、一号機、二号機、三号機がバーンといってるわけですけど、わかりやすく極端なことを言うと、今現在、原発が爆発したときとほぼ何も変わっていない状況です。デブリという放射能のクズが細かいところに入って溜まっている。ものすごい危険物質です。それをひとつひとつ取り除くなんてことは、今の人間の技術ではできないんですよ。だから、原発の周りには名だたる企業の実験棟ができ、カメラを水中に入れて見たりしている。この前やっと映すことができたけれど、原発の一部が映せただけですよね。

 バラエティ番組のドッキリでケーキを爆発させたりするじゃないですか?そうすると、いたるところに生クリームが飛び散りますよね?生クリームだから、人間が布きんでふいたりできますけど、原発が爆発したら、人間は近づけないし、細かいところまでに飛び散ったものを拭い去ることなんて不可能。というのが今の現状。

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福島原発は事故以来何も変わっていない