国が悪い、東京電力が悪いとか、今はそこじゃない。僕も東京電力を取材して、悪い部分も知っている。今はそうじゃなくて、科学的に、この処理水という問題をどうしていくかを考えていかないといけないわけで。科学的なことだけいえば処理水に含まれるものがトリチウムだけになって、海洋に流すと問題はないとされているのだけれど、問題になるのは福島に対する風評被害です。

 西日本の人とかいまだに福島の農産物を食べないという考えの人もいるわけですよ。僕は福島には何回も行ってますけど、米だったら一袋一袋全部審査がある。だから、科学的に言って、日本一、いや世界一と言ってもいい安全な食べ物なんですよ。それなのに、風評被害で食べないっていう人がいるわけですよ。

 そういうほつれた糸を戻していく作業が必要で、それを一番やらなきゃいけないのはメディアなんですよ。トリチウムのこととか知らない人がほとんどで、僕だって細かいトリチウムの数値までは知らないですけど、それでいうと「数値も知らないでいろいろ言うな!」って反対派は言ってくる。そんなこと言われたら、みんなで語れなくなってしまう。国民全体にアナウンスしていって、語り合っていって、わかりやすく説明して、「では、どっちがいいですかね?」ってやらないと。今、コロナ対策も大切だし、経済のことも大切、水害対策も大切だろうけど、もうひとつ大切な原発の問題があって、そのタイムリミットがきているんですよ!

 金もかからずに、40年、50年とタンクを置き続けていいですよっていう土地があればいいですけど。そうはいかない。何度も言いますけど、モルタルの案が採用されたら、それを置く土地と金はどこから持ってくんの?

 それは、代替案ではないんですよね。理想的な代替案かもしれないですけど、今からやらなければならないのは、予算も土地も含めて考えないといけないじゃないですか。一番現実的なのは、海洋に水を流すことを国民に説明をして理解してもらい、なおかつ、国と東京電力はもう隠し事も嘘もつかない状態で、数字はきちんと報告する。なおかつ、福島の農作物や海産物をどんどん食べるようにメディアを使ってアナウンスする。そういったことが、一番大事だと思うんですよ。

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これは福島の問題ではなく日本全体の問題