一方、男性トリオで現在人気ナンバーワンの芸人と言えば、脱力系漫才で知られる四千頭身だ。彼らは、漫才の枠組みそのものを壊すようなネタを得意としている。1つ1つのネタに新しい発明があって飽きさせない。一般的には「トリオで漫才は難しい」と言われるが、四千頭身はむしろその常識を逆手に取って、トリオだからこそできる実験的な試みを繰り返している。ネタ作りとツッコミを担当する後藤拓実がトリオの頭脳として機能している。

 さらに、昨今にわかに注目を集めているのが、4人組の女性ユニット「ぼる塾」である。彼女たちはもともと「しんぼる」と「塾」という別々のコンビで活動していたのだが、2019年に合流して新たに4人組になった。現在、メンバーの1人である酒寄希望が産休に入っているため、その間はトリオとして活動している。

 ぼる塾がトリオとして漫才を演じるときには、きりやはるかがボケ、あんりがツッコミを担当する。そして、そこに割って入るようにして田辺智加が大ボケをかます。田辺は1人だけ年齢が一回り上であることをバカにされたりするが、おだてられると「まあねー」とすぐ調子に乗ってしまう。あんりが巧みなツッコミで2人を操っている。

 トリオ芸という難しい山にわざわざ登ろうとするだけあって、それぞれが全く違ったアプローチでネタを作っているところが興味深い。唯一共通しているのはツッコミの絶対的な安定感である。トリオ芸人は日々進化するお笑い文化の最先端にいる存在なのだ。(お笑い評論家・ラリー遠田)

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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