男性トリオ人気ナンバーワンの四千頭身(C)朝日新聞社
男性トリオ人気ナンバーワンの四千頭身(C)朝日新聞社
3時のヒロイン(提供/吉本興業)
3時のヒロイン(提供/吉本興業)

 日本のお笑い界では、ほとんどの芸人はコンビを組んで活動している。コンビの次に多いのはピン芸人だが、ピン芸人の多くはコンビを解散してピン芸人に転身しており、初めから1人で活動している人はあまりいない。

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 そんなピン芸人よりもさらに珍しいのが、3人で1つのグループを作っているトリオ芸人である。そもそもトリオとして活動する人が少ないのは、それだけデメリットが多いからだ。

 トリオだとギャラを三等分することになるため、ピン芸人やコンビ芸人よりもそれぞれの分け前が減ってしまう。交通費などの必要経費が3人分かかってしまうため、営業やロケなどの仕事にも呼ばれづらい。

 また、トリオのネタ作りにはコンビとは違う難しさがある。特に、漫才の場合はそれが深刻だ。てんぷくトリオ、シティボーイズ、東京03など、歴史に名を残すトリオ芸人の大半がコントを持ちネタにしている。コントであれば、それぞれに役柄を割り振ることで比較的ネタが作りやすい。

 だが、漫才はそうはいかない。漫才は会話劇であり、ボケとツッコミの一対一の関係性が基本である。そのため、トリオで漫才を演じるときには、ボケとツッコミ以外の3人目にどういう役割を与えるべきかを考えなくてはいけない。そこに独特の難しさがある。

 だが、最近、「お笑い第7世代」と呼ばれる若手芸人の中でも、トリオ芸人が急速に台頭しつつある。彼らはそれぞれのやり方でトリオ芸の新しい可能性を切り開いている。

 いま最も勢いのあるトリオ芸人と言えば、福田麻貴、ゆめっち、かなでの女性3人から成る「3時のヒロイン」である。彼女たちは昨年末の『女芸人No.1決定戦 THE W』で優勝したことをきっかけに、一気にブレークを果たした。ニホンモニター株式会社が発表した『2020上半期タレント番組出演本数ランキング』では「2020上半期ブレイクタレント」の1位に選ばれた。

 派手な外見で底抜けに明るいゆめっちと、ぽっちゃり体型でダンスが得意なかなでの強力無比なWボケに対して、福田のキレのあるツッコミが炸裂する。漫才もコントもこなせる上に、歌、ダンス、ものまねなどの特技も多い。エンターテイナー気質のマルチな才能を持ったトリオ芸人である。

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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漫才の枠組みそのものを壊すようなネタが得意な四千頭身