このドラマ版「M」は原作と大きくかけ離れているところも多数あります。まずは、田中みな実さん演じる秘書の「礼香」。あれは完全に僕がオリジナルで作り出したものです。他の周りのキャラクターや、物語も僕が作り出したものが多いのです。だからこそ、SNSでも、浜崎あゆみさんがどう思ってるのか?と心配する声も多数見ましたし、僕自身が一番心配しています。めちゃくちゃ怒ってたらどうしよう……とか。ドラマについて何も語ってないことが、また興味の対象になってしまっている部分もあります。僕の妄想としては、最終回が終わった後に、インスタとかで「このドラマ、最低だけど最高!」なんてことを書いてくれたら、すべてがオールオッケー、脱糞するほど喜んでしまうと思いますが、それはないのかな~と思ったり。

 ただ、一つ。物語がめちゃくちゃな部分があると言われますが、僕は90年代からこの仕事をさせてもらってます。90年代から2000年代にかけて、日本でとんでもなくCDが売れた時代。音楽産業にとてつもないお金が入っては流れていった時代。今、思い返すと、「躁状態」だったなと思ったり。その中で、僕の周りにも、ドラマ「M」よりも激しくとんでもないエピソードはたくさんありました。だから楽しかったというのもあります。

 ドラマの脚本を書くときに、あの時の、トランス状態だった芸能界・テレビ界を思い出したりして、それはとても幸せな経験でもありました。

 最終回を書き終えた時に思ったことは、爆弾のようなキャラクターを投入したり、破天荒なエピソードを多数ぶちこんだりしたけど、だけど、この物語を経て、アユ、浜崎あゆみはスターになり、今もなお健在しているという事実は残っているということ。

 そう思うと、浜崎あゆみのすごさをより感じます。

 フィクションと現実の間に「虹の橋をかけた」と勝手に思っているこのドラマ「M」。

 終わった後、何かリアクションはあるのか?あったらうれしいし、なかったらそれも、またおもしろい。そこまで含めて「M」なんだろうな。

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鈴木おさむ

鈴木おさむ

鈴木おさむ(すずき・おさむ)/放送作家。1972年生まれ。19歳で放送作家デビュー。映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。

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