同科では、25年前までは、99.5%のアルコール(エタノール)で神経を焼く、アルコールブロックをおこなっていた。10年以上という長期間の有効性があったものの、知覚低下や知覚消失を生じることがあったため、その後、新たに高周波熱凝固法を採用した。

 高周波熱凝固法は、針先端の接触した部位のみ発熱するため、安全性が高い。知覚低下やしびれ感という副作用があるが、温度を90度から70度へと下げることなどで対応してきた。
 
 そして、さらに現在のパルス高周波へと至った。

 現在、神経ブロック療法には、患部局所をブロックする末梢枝ブロックと、三叉神経の大本をブロックするガッセル神経節ブロックがある。

「頭蓋底(とうがいてい)という脳の奥深くにおこなうガッセル神経節ブロックは難しい治療ですが、ほかのブロック治療より麻痺が少ないです。麻痺が少なく噛む力が戻ると、QOL(生活の質)を良くします。ブロック療法の利点は、痛みの除去のみならず、患部の血流を改善できるという点もあります。薬剤では痛みを取る以外には血流の改善がありません。合併症としては局所的な出血や感染が皆無とは言えませんが、ほぼ安全にできます」
 
 そして神経ブロック治療は、近年ではMRIとエックス線の画像を重ね合わせて診断することで、より精度の高い治療が可能となっている。

 三叉神経痛では、初発、再発でも痛みが発症したときの応急処置としては、患部を温めることが大切だという。

「電子レンジでチンして蒸しタオルを作り、痛みのある部位に当てたり、お湯を口の中に含んだりして、痛みを鎮めたら、一刻も早く痛みを取り除く治療を受けてください」

 そして、痛みが改善したとき、痛みが出たときの状況を、記録しておくことも大切だと安部医師はアドバイスをする。
(文・伊波達也)