こうした“妨害”はあくまでも一部だ。くしくも先日逮捕された前法務大臣のブログ(2018.4.28)にも、自分が安倍さんの命を受け、ドゥテルテ大統領と2人きりで話して撤去してもらいました!みたいなノリで書いてあった。

 また去年はウガンダで計画された性暴力被害者支援センターがつぶされた。ウガンダは1980年代から続いた内戦で多くの少女が性暴力被害にあい、妊娠させられ、殺された。その歴史を記録するセンターが、韓国の「慰安婦」女性やその支援者たちと共につくられようとしていた。センターには元「慰安婦」の金福童さんの名がつけられ、施設内には日本軍「慰安婦」の歴史が展示されることになっていたのだが、着工式直前に、それまで女性たちを支持してきた市長から「『日本』『慰安婦』という言葉を使うな」と脅しのような連絡があったという。紛争地の性暴力被害が国際的に大きな注目を集めてきた時代背景に、ウガンダの女性たちと金福童さんの交流は、BBC等でも報道されていた。

 計画されてきたことが、上からの圧力や命令で突然消される。そういうことが「慰安婦」問題をめぐっては世界各国で起きてきた。公的な記録に残る「情報発信」ではないかもしれない。それでも「ネガティブな対日認識を払拭する」ための行為に、私たちの税金はどのように使われてきたのか。コロナ禍で改めて、見つめるべきことなのではないかと思う。

 テレビをつければ「日本すごい」「感動を与えたい」「勇気をありがとう」といった薄っぺらい言葉が耳にたくさん入ってくる。国内情報はかなりステキに「情報発信」できているのかもしれないが、そのおかげでかなりうそくさくなってきてしまった。どのような情報が「好ましくない」とされるのか、真実を知りたい。そんなことも、コロナによって気づかされたことの一つだ。

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北原みのり

北原みのり

北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。女性のためのセクシュアルグッズショップ「ラブピースクラブ」、シスターフッド出版社「アジュマブックス」の代表

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