世界でロックダウンが徐々に緩和されていくなか、日本でも26日に首都圏と北海道で緊急事態宣言が解除されたことで、全国的な解除となった。しかし、解除後も、治療・予防の「武器」がそろわない間は、「人と人の距離を開ける」「三密を避ける」「石鹸で手洗いを丁寧にする」などの一人ひとりの予防が引き続き重要になる。ウイルスの活性が高まるとされる秋冬には再び牙をむいて私たちを脅かす可能性は高いからだ。

 世界的な終息の鍵となる「集団免疫」は、おおむね60%ほどが感染することで、ウイルスはヒトの間で感染を広げられなくなり、流行は沈静化するというものだ。獨協大学医学部微生物学講座教授の増田道明氏は本書で、「感染者を抑えてオーバーシュートを回避することと、感染者を増やして短期間での集団免疫を形成すること、人類は明らかに相反する課題に挑まなくてはならない」と語っている。

 前書の日本語版序文の中でクイン氏は、こんな不吉な指摘をしている。

<……スペイン風邪の時も第一波が去ると、だれもがこれで流行のピークは過ぎたと思った。ウイルスがしばらくなりをひそめている間に変異し、“毒性”を高めていることなど知るよしもなかった。そして第2波が襲ってきた。不意をつかれた政府が事の重大さを理解した時には、すでに手遅れだった。恐るべき破壊力を備えたウイルスが誰彼かまわず襲いかかり、瞬く間におびただしい数の人命を奪っていった……>

<……そうなった時にどれくらいの死者が発生するか推測するのは難しいが、少なくとも全世界で何百万単位の犠牲者が出るのではないだろうか。おびただしい数の死者が出るばかりではない。各国の企業や組織、さらには国際機関の機能が麻痺することも考えられる。(中略)日本やヨーロッパ、アメリカなどの大企業は、主要スタッフを含む多くの従業員が働けなくなり、もはや維持・運営ができなくなってしまうかもしれない。同様に、保険医療当局を含む政府機関や各省庁も、対応能力が著しくそこなわれる恐れがある……>(山田美明、荒川邦子訳)

 第2波の恐ろしさを事前に知っておくこと、それがわれわれの命を守るために必要な「武器」となるだろう。