辞任の意向を固めているという黒川弘務検事長(C)朝日新聞社
辞任の意向を固めているという黒川弘務検事長(C)朝日新聞社

 東京高検の黒川弘務検事長(63)の「賭けマージャン」疑惑が世間を震撼させている。黒川氏の検事長辞任は既定路線とされているが、なぜ黒川氏はそんな「リスク」をおかしてまでマージャンに出かけたのか。コロナ禍で外出自粛が呼びかけられるなか、そして検察庁法改正が世間の耳目を集めるなか、それでも「賭けマージャン」が止めらないというのは、一種の「依存症」の兆候なのではないか。「ギャンブル依存症問題を考える会」代表理事の田中紀子氏に話を聞いた。

【写真】コロナ禍で行列しても「自分はパチンコ依存症ではない」と語る客たちの声

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――黒川氏は法務省の内部調査に対して「賭けマージャン」を認めたと報じられています。コロナ禍の非常事態で、しかも日本中から自分が注目されている状況で黒川氏はなぜこのような行動をしてしまったとお考えですか。

田中氏 まずこの方(黒川氏)は相当なギャンブル好きだと思われます。自分一人のために法律を変えようという緊張感の中にいる時に、賭けマージャンに手を出してしまうというのは、ものすごく思い切った行動です。お金を賭けているだけではなく、人生も賭けているわけですから。

 黒川さんは検察組織のナンバー2という立場です。これまで検察組織の中で出世競争を勝ち抜き、安倍政権からも信頼を勝ち得てきたのでしょう。それだけの能力があり、世渡りをこなしてきた判断力を持ちながら、簡単なモラルが守れない。立場を省みず、優先順位をひっくり返してギャンブルに突き進んでしまう時点で、依存症予備軍と言ってもいいと思います。

――賭けマージャン疑惑を報じた「週刊文春」では検察関係者の「黒川氏の犬の散歩以外の趣味は麻雀とカジノ。休日にはマカオや韓国にカジノに出掛けることもあるそう(以下略)」という証言も掲載しています。これが事実ならば、マージャンという「娯楽」が好きというだけではない気がします。

田中氏 マージャンとカジノはパチンコなどと比べて、グループ的な要素が強い。マージャンは特にそうです。一緒に座っている人の行動次第で、戦局がいかようにも変わります。相手の行動を読み、新たな手を考える心理戦なのです。駆け引きが好きなタイプのギャンブラーなのだと思います。

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役職者でも依存症になる「賭けマージャン」