なかでも先進的な取り組みの例として、帝京大学ラグビー部があります。かつて大学ラグビーといえば、明治大、早稲田大、慶應大といった伝統校が優勝を争っていました。そこに、食事とトレーニングを合わせて選手の肉体強化をはかった帝京大が強くなり、2009年から9回にわたる全国大学選手権連覇を達成しました。同大では2011年に「スポーツ医科学センター」を設立し、ラグビー部を始めとする学内の運動・部活動の医科学的サポートを充実させています。最近は、日本のスポーツを強くすることを目標として、学外の多くのアスリートにもサポートを拡大して栄養指導をおこなっています。

 スポーツ栄養はアスリートにとって、次の三つの意味で重要です。

 一つ目は、「トレーニングによる身体づくり」。試合や大会で力を発揮するために、基本となる日常生活における身体づくりとコンディション維持をおこないます。

 二つ目は、「競技の本番で能力を発揮するための準備」。パフォーマンス向上のため、試合前・試合直前・試合中・試合後の食事を調整します。

 三つ目は、「スポーツにともなう種々の障害の予防および改善」。脱水症状や貧血、疲労骨折などの予防および改善をはかります。

 スポーツは種目によって、瞬発系、持久系、球技系、審美系、格闘技など、競技特性はさまざまです。それぞれの競技によって、異なるからだつくりの視点、試合でのベストパフォーマンス発揮のための方法があります。

 たとえば、陸上の短距離走やウェートリフティングなどの瞬発系種目では、大きな力を短時間に発揮する瞬発力がパフォーマンスに大きく影響します。瞬発力の要素は筋力であるため、瞬発系の種目の選手は、通常トレーニング期の筋肉づくりのための栄養補給、とくにたんぱく質の補給と、試合期の栄養補給がポイントになります。

 マラソン、トライアスロンなどの持久系種目では、一定強度の運動を長時間持続します。エネルギー源となる糖質、脂質のほか、エネルギー代謝に必要なビタミンや、貧血予防のための鉄分を始めとしたミネラルの補給も十分に摂る必要があります。持久系の場合、体重が軽いほうが有利といわれ、重要な試合に合わせて体重をベストな状態に調節することもあります。長時間の練習によりエネルギー摂取量が不足しないよう、とくに成長期の選手は注意しなければなりません。

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現場のニーズに的確に応えるのが「公認スポーツ栄養士」