アフターコロナでは、産業の転換が起こるという河合氏。写真は開発中のアバターロボット(C)朝日新聞社
アフターコロナでは、産業の転換が起こるという河合氏。写真は開発中のアバターロボット(C)朝日新聞社
『未来の年表』著者の河合雅司氏(本人提供)
『未来の年表』著者の河合雅司氏(本人提供)

 2017年に刊行された『未来の年表』(講談社現代新書)は、このまま人口減少が進んだ「将来の日本」の姿を緻密なデータから導き出した。その予測は世に衝撃を与え、累計で88万部突破の大ベストセラーとなった。だが、新型コロナウイルスの感染拡大で世界は一変した。未来の年表にも“上書き”される部分はあるのだろうか。【前編】に続き、著者でジャーナリストの河合雅司氏に、アフターコロナの日本の未来について聞いた。

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■出生数が低下し、死亡数が増加する

 コロナ禍で不安が広がると、心配されるのは出生数の低下です。収入が下がり、経済的な痛手がいつまで続くのかにもよりますが、先が見通せない状況が長引いたのでは、「子供が生まれて家族が増えても、生活していけるのか」といった不安が大きくなります。

 一般的には、不安心理が強まると、一時的に婚姻や出生が増えるといわれています。東日本大震災の後も、人とのつながりを求める機運が高まり、カップルが増えたとのデータが出ています。しかし、自然災害はそう長く続くわけではありません。目の前の脅威が収束すれば復旧、復興へと切り替わりますし、エリアも限定されています。この点、今回のコロナ禍は感染の長期化が避けられず、世界規模で経済が甚大な被害を受けましたので、いつ本格復興のスタートラインに立てるのかさえ見通しが立たないのです。状況が大きく異なります。

 こうした状況は自然災害よりも、むしろ戦時中と近いかもしれません。太平洋戦争の際も、戦火が激しくなるにつれ、出生率は低下しました。同様にコロナ禍も、先の見えない状況が大規模化・長期化すればするほど、出生率の低下が進んでしまう可能性は大きくなるでしょう。

 その一方で、今後は死亡数が増えると思います。コロナ禍が長期化するとストレスがたまることによって免疫力が低下し、ほかの病気を誘発したり、持病を悪化させたりするリスクが高まります。このほか、経済的困窮による自殺など、ウイルスへの感染による直接的な死因ではなくても、コロナ禍が「遠因」となって亡くなる人の増加が予想されます。

 長期的にとらえれば、コロナ禍がもたらす経済の低迷が平均寿命の伸びを鈍化させ、縮む方向に転じる可能性もあります。平均寿命の伸びは、経済状況の影響を受けるとされています。政府の推計では死亡数のピークは2040年頃としていますが、ピークの山が早まる可能性もあります。

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「命さえあれば復興できる」は楽観的