■産業の転換が起こる

 コロナ禍で社会のニーズが大きく変化し、それに伴いテクノロジーの進歩や産業の転換も進むでしょう。

 例えば、ソーシャルディスタンスの浸透により、不特定多数の人が接触することへのオートメーション化が進むと思います。飲食店での接客スタイルも、ロボットが配膳するなど、接触を避ける流れが進むでしょう。

 こうした分野は日本の高い技術力を大いに発揮できます。世界中で同様のニーズが高まるはずなので、他国に先駆けて対応できれば、新たな日本の成長路線が見えてきます。

 最後に、アフターコロナを見据え、日本はどのように立ち回るべきかを考えてみましょう。

 人口減少が急速に進む以上、日本はコロナ禍からの復興策も他国と同じようにはいきません。

 例えば、各国とも医療資材の国内生産回帰を推し進めようとしていますが、生産年齢人口が減り続けている日本が、人手を集めて同じような体制を維持できるでしょうか。また、他国では消費喚起策で経済復興を推し進めるでしょうが、日本は人口が減って行き、しかも「老いた国」なので、単純な消費喚起策ではうまくいきません。

「老いた国」にとって、コロナ禍のダメージは若い国よりも大きいのです。日本はたとえて言えば、人口減という「慢性疾患」を抱える患者そのもの。そこへコロナ禍という「急性疾患」が襲ったわけですから、対処法を間違えれば、国が死んでしまいかねないのです。

「命さえあれば、経済の再興は後から何とでもなる」など、感染症防止を最優先にすべきだという意見もあります。しかし、それは「若い国」でのみ成立する論理です。戦後の日本は「若い国」だったから復興できましたが、多くの国民が年老いた今、同じように復興できるかわかりません。

 今回の場合、日本経済が疲弊し切ってしまってからでは、社会復興は極めて難しくなるでしょう。それは、日本が「貧しい国」になるということです。

 これまでの政府の政策は「医療崩壊」の抑制を優先してきました。それが間違いだったと言うつもりはありませんが、その裏で、人口減少も踏まえた大局的な政策を考えていた政治家や官僚がどれだけいたでしょうか。

 目先の感染拡大を止めるための課題が山積しているので仕方がない面もあったわけですが、最終的にはウイルスとうまく付き合いながら社会経済活動をしていくしかありません。感染が少し収束したならば、アフターコロナをにらんだ長期的な経済活動も含め、もう少し大局的に物事を考えないと、日本は手遅れとなります。

(構成/AERA dot.編集部・飯塚大和)

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