あの時、私のところには「タワマンは災害に強いのではないのですか」という疑問が数多くのメディアから寄せられたのだが、そこから一気に「タワマンは災害に弱い」という認識が世間に広まった。

 もし「タワマンはウイルスに弱い」という風評が広まれば、湾岸に限らずタワマン全体の資産価値にマイナスの影響をもたらすだろう。

 そうなると、これまでタワマンの建設に肯定的だった行政側の姿勢にも変化があるかもしれない。タワマンの建設には行政の規制緩和が不可欠なので、行政側の態度が硬化すれば供給自体が減る可能性もある。

 そして、テレワークが浸透して自宅にいる時間が長くなるほど重視されるのは、居住空間の「サイズ」だろう。

 ここ10年ほど、都心とその周縁で供給された新築マンションは、コンパクトタイプが中心だった。70平方メートル以上の3LDKタイプは少なくなり、家族でも60平方メートルくらいから、中には25平方メートル程度のワンルームも増えた。交通利便性を重視する都市生活者にとっては、そういう狭小プランにも需要があったのだ。

 しかし、そうした狭い空間に長時間いると、当然ながら人間は狭苦しさを感じてしまう。人類は霊長類の亜種である。そもそもは、草原を走り回っていた生き物なのだ。狭い空間で長期間を過ごすことがストレスにつながるのは、遺伝学的にも納得できる現象である。

「ただ寝るために帰る場所」であれば、狭小プランの住宅でもよかったかもしれない。しかし、今後の物件選びでは、感染症が蔓延した際の「ステイホーム」空間の役割も想定しなければならない。30平方メートル未満のコンパクトマンションは敬遠されることが予想される。

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人気沿線も「満員電車」区間は敬遠される