武蔵小杉駅付近に林立するタワマン。ウイルス時代にも今の需要を維持できるか。(C)朝日新聞社
武蔵小杉駅付近に林立するタワマン。ウイルス時代にも今の需要を維持できるか。(C)朝日新聞社

 コロナ危機で世界が激変するなか、マンションという住まいのあり方にも大きな影響がありそうだ。「コロナ後」にマンション選びの基準はどう変わるのか。30年以上にわたり、マンション市場を分析してきた住宅ジャーナリストの榊淳司氏が寄稿した。

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 いつまで続くか分からないコロナ騒動も、必ずどこかで沈静化する。

 PCR検査や抗体検査の簡易キットが開発され、量産に入ったというニュースも見かけるようになった。各国が取り組んでいるワクチンや特効薬の開発にも期待できる。コロナ騒動の“終わり”がやってきそうな兆候は見え始めている。

 しかし、見えにくいのが「コロナ後」の社会だ。

 コロナは世界を大きく変える可能性がある。ここ数カ月ですら、私たちの暮らしやライフスタイルを大きく変えてしまったからだ。その変化は、当然のように住宅のあり方や資産価値にも及ぶだろう。

 ここでは、コロナ禍によって首都圏のマンション市場はどのような変化をもたらすか、その未来を考えてみたい。

 まず留意したいのは、今回のコロナ騒動は今後また起こる可能性が残っていることだ。いわゆる「第2波」も世界中で懸念されている。再び同様の事態が発生した場合、政府は今回の経験を生かした対応ができなければ、メディアや国民から厳しい批判を受けることになる。従って、政府は今回のコロナ禍で比較的成功した施策をまた踏襲するはずだ。

 そのひとつは、テレワークの推進だろう。密閉、密集、密接を避けるために推奨されたテレワークにより、多くの人が自宅で仕事をする状況となった。政府が通勤を自粛させたことは、爆発的感染を阻止した大きな要因の一つだと言われる。そして図らずも、テレワークを始めた多くの人は気づいたはずだ。

「毎日オフィスに通わなくてもある程度の仕事はできる」

 ここ十数年、マンション市場は都心回帰の傾向を強めてきた。かつては郊外の自宅から夫が長距離通勤で都心に通い、妻が子育てをしながら家庭を守る、というのが平均的な家庭像だった。ところが、最近では都心や近郊のマンションに暮らして夫婦ともに仕事をする、というスタイルが主流となってきた。

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キーワードは「自然」と「環境」