学生向けに毎週メッセージと読書案内を発信している田中優子・法政大総長((c)朝日新聞社)
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 言葉は大切である。

 政治家の発言はたいへんな影響力を持ちうるので、慎重を期さなければならない。大学トップの発言も、最高学府の責任者として注目される。

 新型コロナウイルス感染症問題で、大学学長、総長はさまざまな言葉を発している。このなかで学ぶことが多い発言もあれば、首をかしげたくなるような発言もある。いくつか紹介しよう。

 京都産業大は、関係者から多くの感染者が出た。大城光正学長はこう謝罪している。

「本学卒業生・学生のなかから新型コロナウイルス感染症の罹患者が発生し、さらに感染の拡大が続いております。感染が確認された地域の方をはじめ、皆様に多大なご心配とご迷惑をおかけし、深くお詫び申し上げるとともに、罹患された方々の一日も早い治癒をお祈り申し上げます」(大学ウェブサイト、4月1日)

 同大学の学生は、海外旅行をして感染者となり、帰国後に広めてしまったという経緯があった。その後、大学に対して批判的な意見が寄せられてしまう。

 それだけではなかった。同大学の学生に対するレストランの入店拒否、アルバイトの解雇など差別的な言動もあった。「中には誹謗(ひぼう)中傷や『感染している学生の名前や住所を教えろ』『殺しに行く』など脅迫的な内容もあるといい、大学側が対応を検討している」(朝日新聞デジタル、4月8日)とまで報じられた。

 このような事態を憂い、次のように説いたのが神戸市外国語大の指昭博学長である。

病気という目に見えない脅威は、人々を不安にし、その不安に何らかの説明を求めようとします。この不幸の原因は自らにあるとして、病を神から下された懲罰と考えることもありました。その反対に、自分は何も悪くないのに、病気が迫ってくることは理不尽であると考え、他人に原因を求めることもありました。そのため、パニックに陥った人々が、悪魔や魔女といった邪悪な存在によって脅威が引き起こされているのだと思い込み、何の罪もない弱者を魔女とみなして処刑する、といった不幸な出来事もありました。(略) 

 不安は疑心暗鬼を生み、さらに不安を煽ることになりがちです。事実とデマでは、デマの方が広がりやすい、という研究もあるようです。かつての魔女迫害のように、他者を悪者に仕立てることで安心するのかもしれません。しかし、それは本当の安心ではありません。ただ、目の前の状況を認めたくないと、目をそむけているだけです。不安に立ちすくんでしまうのではなく、錯綜する情報を精査し、しっかり正しい判断をできるかどうかが大切です」(大学ウェブサイト、4月1日)

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