ラジオでは自らの言葉で謝罪するという岡村隆史。(C)朝日新聞社
ラジオでは自らの言葉で謝罪するという岡村隆史。(C)朝日新聞社
岡村のことを認めていた志村けんは草葉の陰で何を思うのか。(C)朝日新聞社
岡村のことを認めていた志村けんは草葉の陰で何を思うのか。(C)朝日新聞社

 ナインティナイン・岡村隆史の「舌禍」騒動から1週間が過ぎた。問題視されたのは4月23日の深夜、自らがパーソナリティーを務める「オールナイトニッポン」(ニッポン放送)での発言だ。

【写真】女性で「炎上」続きといえばこの人

 リスナーから寄せられた「新型コロナウイルスの影響で、風俗店に行けない」というメールに対し「収束したらおもしろいことあるんですよ」「短期間ですけれども、美人さんがお嬢やります」「その3カ月のために今は歯食いしばって頑張りましょう」と回答。これが「女性への搾取」とか「貧困問題の軽視」といった批判を招いた。

 27日にはニッポン放送、29日には所属する吉本興業が謝罪。また、大河ドラマ「麒麟がくる」やバラエティー番組「チコちゃんに叱られる!」に起用しているNHKも遺憾の意を表明した。30日深夜には「オールナイトニッポン」のなかで本人が謝罪するという。

 岡村は現在、49歳で独身。いわば「非婚芸人」のひとりだ。先日、独身のまま70歳で亡くなった志村けんのことを尊敬していて、

「僕がバラエティー番組でやる動きや表情は、ほぼほぼ志村さんのコピー」

 とまで語っている。実際「アイーン」をちょくちょくマネして、それが志村の再評価にもつながった。志村も彼を可愛がり「二代目志村けんは?」という質問に「岡村かな」と答えたりしていたものだ。

 ただ、当然ながら、似ていないところもある。じつはそこから、この舌禍騒動の本質も見えてくるのだ。

 たとえば、志村は結婚について「僕はこのへんが本当に下手なもんでね」と自嘲していたが、恋愛経験は豊富だった。その「豊富さ」には意外な事情も絡んでいる。若い頃、女性と別れる際、財産を半分持っていかれたことがあるという。そのとき、3年以上の同棲は「内縁関係」と見なされると知り、それ以降、同棲は3年以内、と決めたらしい。

 一方、岡村は恋愛自体が苦手なタイプ。バラエティー番組の婚活企画でも、なかなか一線を超えられない。有名仲人士の村上れ以子に「何かコンプレックスなどがあって、自信がないのではないか」と指摘されているほどだ。それゆえ、風俗通いのほうが女性と気楽につきあえるのだろう。彼のスタンスには、そこで働く女性たちへのリスペクトや仲間意識のようなものが感じられるという声もあり、今回の発言も、許されないとする意見について想定できていなかったことがうかがえる。

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宝泉薫

宝泉薫

1964年生まれ。早稲田大学第一文学部除籍後、ミニコミ誌『よい子の歌謡曲』発行人を経て『週刊明星』『宝島30』『テレビブロス』などに執筆する。著書に『平成の死 追悼は生きる糧』『平成「一発屋」見聞録』『文春ムック あのアイドルがなぜヌードに』など

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「芸」の面でも似て非なる2人