TVウォッチャーの中村裕一氏は、慶応大出身の芸人についてこう分析する。

「ほかの慶応大芸人としては、かつて『号泣』というコンビを組んでいた、手相占いで有名な島田秀平が通信制の卒業生、『パンケーキ食べたい』で昨年プチブレイクした夢屋まさるが在学中、また、ロンブー・田村淳も大学院のメディアデザイン研究科に籍を置いています。一般の会社でも『早稲田閥』『慶応閥』という派閥があるように、お笑い界でも他と比べて目立つ存在になりつつあります。慶応大とお笑いとの相関関係を明確に定義するのは難しいですが、知的で他にはない視点・切り口を持ち、自ら先頭に立って道を切り開くというイメージがあるので、慶応大の校風を含め、大学生活を通じて培われる何かがあるのかもしれません。お笑い芸人も昔と違い、笑いにプラスアルファを求められる今の時代にあって、今後、慶応大芸人のニーズは高まっていくと思います」

■従来の芸人像を打破するオリラジ中田

 そして今、彼らが単なる高学歴芸人として終わらない時代になってきている。その代表格がオリエンタルラジオの中田敦彦だろう。

「オリラジのあっちゃんは在学中にNSCに入学し、卒業後すぐに人気が出たためすぐに“慶應大卒芸人”としても注目が集まった。クイズ番組への出演やトーク番組でのうんちく披露から徐々に“成功のメソッド”のようなトークが増えてきて、意識高い系から支持を集めていました。最近ではすっかり教育系ユーチューバーとして動画を配信したり、ビジネス系メディアで社会問題について討論したりするなど、ビジネス方面の展開で話題になっています。『中田敦彦のYouTube大学』はたびたび内容をめぐって炎上していますが、ファンも多く、再生回数もかなり多い」(放送作家)

 中田と似たケースではAO入試で入学した女性芸人・たかまつななもいる。現在、自ら会社を設立し、講演活動を始めとしたビジネスを手掛ける起業家として注目されており、本人も「お笑い界の池上彰」を目指しているという。

「あっちゃんやたかまつななのように、慶応大卒の芸人さんはお笑いの定義を変え、さまざまな方法で人を楽しませるビジネスに変換させていくことが得意なのかもしれません。芸人であってもビジネスマンとして顔出しで人を引きつける企画を立てたり、高いコミュニケーションスキルにあこがれている。経営戦略をたて、自己プロデュースをしながらビジネスをしていくこともまた、ひとつのタレント力です」(同)

 慶応大芸人がお笑い界をリードし、新風を巻き起こすかもしれない。(今市新之助)