東日本大震災から9年。プライベートで被災地への旅を続け、著書『福島のことなんて、誰もしらねぇじゃねえかよ!』もあるお笑い芸人のカンニング竹山さんは、“原発の街”についての報道に違和感を訴える。

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 震災から9年になりますが、今年もやはり原発近くの街についての報道が画一的で良くないなと感じます。3月4日には福島県双葉町の一部、5日には大町の一部で避難指示が解除されましたが、JR常磐線の全線開通に向けて、双葉駅と大野駅とそれぞれの駅前の狭い範囲が解除されただけなんですよね。それなのに報道番組のリポーターが現地に入って、人のいない駅前と汚染水のタンク、立ち入り禁止を示すバリケード、住めなくなった家、汚染土が入った黒い袋の山、その近くを行き交うトラックの様子を伝えています。そしてジャーナリストが「解除されても8割の住民が戻っていません。原発の安全性とは……」と番組を締めるわけです。それを見て、土地勘もない全国の視聴者がどう感じるか? やっぱり住めないのか、危ないから戻りたくないんだなとしか思いません。

 そうじゃないんですよ。そもそもこれらの地域は、原発事故の前から過疎の街でした。そこに原発で働く人たちが住んでいたわけです。事故後、危険だから全域避難になったのは事実ですが、原発という雇用の場がなくなり、仕事を失ったことで住めなくなったという人も大勢いる。そういう情報もあわせてきちんと伝えなきゃいけないのに、「放射能の危険から避難させられ、恐ろしくて今も戻れない」というシナリオにするのはすごく安易だと思うんですよね。しかも毎年毎年、新たに解除になった土地から中継しては、同じようなリポーターの感想を伝えているだけ。こんなこと9年たってもまだやってるの!?と思います。

 それは復興に対する思い込みと、同じような構図だと思うんですよね。そもそも田舎のまちづくりなのに、復興が進めば大都会になるとか、元通りになると誤解している人は多いですよね。そうではなくて、ゼロから街をつくっていくから以前と同じにはなりません。影響力があるはずのメディアが伝えるべきことは、この地域にどうやって活力を入れていくか。新しい街をどう描くか、まだ住民は戻っていなくてもここにはチャンスもたくさんあるはずだ、ということですよね。

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カンニング竹山

カンニング竹山

カンニング竹山/1971年、福岡県生まれ。お笑い芸人。本名は竹山隆範(たけやま・たかのり)。2004年にお笑いコンビ「カンニング」として初めて全国放送のお笑い番組に出演。「キレ芸」でブレイクし、その後は役者としても活躍。現在はお笑いやバラエティー番組のほか、全国放送のワイドショーでも週3本のレギュラーを持つ。単独ライブ 「放送禁止2017」が9月21~24日、東京・品川の天王洲銀河劇場で開催(撮影/写真部・小原雄輝)

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