東京パラ大会で医学的なアドバイスをしている医師の陶山哲夫・東京保健医療専門職大学長(撮影/越智貴雄)
東京パラ大会で医学的なアドバイスをしている医師の陶山哲夫・東京保健医療専門職大学長(撮影/越智貴雄)

 新型コロナウイルスの感染拡大に終わりが見えない。特にスポーツイベントへの影響は大きく、東京マラソンは一般参加なし、大相撲春場所は無観客で開催されている。

 この状況下ではたして東京オリンピック(7月24日~8月9日)は予定通り開催できるのか。日本のみならず、世界中から注目が集まっている。

 橋本聖子五輪相は3日、参院予算委員会で開催延期に言及。国際オリンピック委員会(IOC)と東京都などとの契約では「2020年中であれば延期できると取れる」と“独自の解釈”を示した。これに即座に反応したのがIOCのバッハ会長だ。発言を受けて同日(現地時間)、「東京五輪は計画通り7月24日に開幕する。成功に自信を持っている」と、「五輪延期」の考えを打ち消した。

 開催が危ぶまれているのは、オリンピックだけではない。8月25日に開幕する予定の東京パラリンピックも、大会準備に遅れが出ている。パラリンピック代表候補選手の関係者は、こう話す。

「1月に中国で新型コロナウイルスの感染拡大が報道されるようになってから、国内外で大会中止が相次いでいます。水泳や陸上などの個人種目では代表選手が決まっていない競技も多く、大会が開けないことで選考に影響が出るのではと心配する声も出ています」

 パラスポーツで人気の高い車いすバスケットボールは、障害の程度に応じて区分する「クラス分け」が課題だ。1月末には、国際パラリンピック委員会(IPC)が、車いすバスケでパラ大会に出場資格のない障害の軽い選手がいる可能性を指摘。「競技の高潔性を脅かす」という強い言葉とともに、国際車いすバスケットボール連盟(IWBF)にクラス分けの基準再考を迫った。5月29日までに改善できなければ、東京大会の実施競技から除外すると「最後通牒」まで出している。

 パラスポーツを取材する報道写真家の越智貴雄氏は、こう話す。

「車いすバスケは、IPC本部のあるドイツでは180のチームがある人気競技で、プロとして活動する選手もいます。そのドイツはもちろん日本の主要大会でも、男女混合や健常者との混合でチームを組めるなど、パラ大会にはない特別ルールもあります。実際には、パラ大会に出場資格のない障害の選手が国内リーグなどに参加して盛り上がりをみせていた側面もあり、IWBFとして切り分けが曖昧なままになっていたのではないか」

次のページ
日本パラリンピック委員も指摘する危険性