2002年11月に人間への感染が初確認されたSARS(重症急性呼吸器症候群)では、世界保健機関(WHO)が封じ込め宣言するまで約8カ月かかった。新型コロナウイルスはSARSより感染力が強いとされ、SARS以上に時間がかかることも予想される。夏場に向けて気温が上がりウイルスの活動量が低下すれば、7月ごろに流行が収まるとの見方もあるが、WHOで緊急事態対応を統括するマイク・ライアン氏は、「異なる気候状況で新型ウイルスがどのような行動や反応をするのかは、明らかになっていない」と、楽観的な見方にクギを刺している。

 また、新型コロナウイルスはイランなど医療制度が発達していない国にも広がっている。北朝鮮は、国内で感染者が出ているのかすら不明だ。日本が封じ込めに成功したとしても、大会期間中に他国から再び新型コロナウイルスが持ち込まれる危険性もある。

 陶山医師は、東京オリンピック・パラリンピックについて「予定通り開催されることが望ましい」と話す。ただ、パラ選手への健康リスクが高いのであれば「組織委員会が決めることではあるが、無観客大会も検討する必要がある」という。また、開催時期を遅らせて今年12月までに開催する案については、「寒くなれば新型ウイルスが再流行する可能性もある」と指摘する。すでにIPC関係者からも「延期せざるをえないなら、1年後の同じ時期に開催したほうがいい」との声も出ている。

 国際的なイベントで海外から特定の地域に多くの人が集まることを「マスギャザリング」という。16年のリオ五輪では、ジカ熱の流行が問題になったことがある。現時点では、パラ東京大会のチケットの売れ行きは好調で、これまで計165万枚が販売された。オリンピックと同じく、パラ大会の期間中は世界中からたくさんの人が集まることは確実だ。新型ウイルスという未知の脅威に、パラ選手と大会関係者は難しい対応を迫られている。

(AERA dot.編集部・西岡千史)