バイオフィルムは抗生剤で取り除くことはできません。薬では確かに口の中の一定数の歯周病菌を殺すことはできますが、バイオフィルムがある限り、すぐに残った菌が活動を始めます。そして歯周病の再発を引き起こします。

 バスタブで、バイオフィルムを取り除くにはタワシやスポンジで磨くように、機械的に清掃をする作業が必要です。歯科医院で専門の器具を使っておこなうクリーニングがそれにあたります。

 歯周病の人は歯の周りに歯周ポケットができていて、この中に歯石がたまっていることがほとんどです。場合によっては歯ぐきを切開してこの歯石を取り除く外科処置が必要です。

 プラークを取り除いたらセルフケアと定期的なメインテナンスでプラークが増えない状態を維持します。これを続けることができれば歯周病は再発しませんし、抗生剤も必要ありません。

 世の中には抗生剤だけで歯周病を治そうとする歯科医師がいると聞きます。しかし、これは当然、間違いです。抗生剤の使いすぎはからだにもよくありませんし、乱用することで耐性菌が表れやすくなるという問題もあります。安易に使うものではないのです。

著者プロフィールを見る
若林健史

若林健史

若林健史(わかばやし・けんじ)。歯科医師。医療法人社団真健会(若林歯科医院、オーラルケアクリニック青山)理事長。1982年、日本大学松戸歯学部卒業。89年、東京都渋谷区代官山にて開業。2014年、代官山から恵比寿南に移転。日本大学客員教授、日本歯周病学会理事を務める。歯周病専門医・指導医として、歯科医師向けや一般市民向けの講演多数。テレビCMにも出演。AERAdot.の連載をまとめた著書『なぜ歯科の治療は1回では終わらないのか?聞くに聞けない歯医者のギモン40』が好評発売中。

若林健史の記事一覧はこちら