「左足に変な模様ができました」と受診した患者 皮膚科医の迷推理は? (2/2) 〈dot.〉|AERA dot. (アエラドット)

AERA dot.

「左足に変な模様ができました」と受診した患者 皮膚科医の迷推理は?

連載「現役皮膚科医がつづる “患者さんと一緒に考えたいこと、伝えたいこと”」

大塚篤司dot.#病気
大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員を経て2017年より京都大学医学部特定准教授。皮膚科専門医

大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員を経て2017年より京都大学医学部特定准教授。皮膚科専門医

※写真はイメージです(写真/Getty Images)

※写真はイメージです(写真/Getty Images)

 ひだこは低温やけどの一種です。

 放置していても特に問題はないのですが、ひだこ以上のやけどになってしまうと傷ができます。これ以上、熱源に近づいたらいけないというサインでもあります。なので、先の患者さんには薬の処方はせず、「こたつの熱源に足を近づけすぎないようにしてくださいね」と指導しました。

 気をつけなければいけないのは、ひだこに似たような網目状の模様ができる病気があることです。血管炎の一部は、見た目がひだこにそっくりな模様をつくります。

 ひだこは、一般の人にはあまりなじみのない皮膚病のように感じられるかもしれませんが、ひだこが語源となる「ある有名な地方の行事」はみなさんよく知っているはずです。

 それは、

「泣く子はいねがー」

 で有名な、なまはげです。

 なまはげの語源は、「火斑(なもみ)を剥ぐ」がなまったものと言われています。囲炉裏にあたってできた「なもみ」は、冬場、火にあたってばかりで怠けていた証拠として考えられていました。温かいところでぬくぬくとサボっているなもみを剥ぎ、怠け者の子供を戒めることから、なまはげと呼ばれるようになったそうです。

 この「なもみ」こそが、ひだこです。

 ここまで説明すると患者さんもうなります。

「へー、面白いですね」

 私は迷推理を挽回(ばんかい)すべく、ひだことなまはげのトリビアを患者さんに説明して一件落着。

 皮膚科医としての矜持(きょうじ)は守りました。

 このように、皮膚病は地域の風習や伝統に深く関わります。また、時代とともに減りつつある病気も、なまはげのように形を変え、知識として後世に残っていきます。

 私はなかなか名探偵にはなれませんが、皮膚病にまつわる豆知識を知ることができるのも、皮膚科医冥利(みょうり)につきるものです。

 テレビでは医療ドラマがブームですが、皮膚科医を主人公にした番組はまだないようです。ずっこけ名探偵を主人公にした皮膚科医のドラマ、誰かつくってくれないかしら。


トップにもどる dot.オリジナル記事一覧

大塚篤司

大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員、2017年京都大学医学部特定准教授を経て2021年より近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授。皮膚科専門医。アレルギー専門医。がん治療認定医。がん・アレルギーのわかりやすい解説をモットーとし、コラムニストとして医師・患者間の橋渡し活動を行っている。Twitterは@otsukaman

おすすめの記事おすすめの記事
関連記事関連記事

あわせて読みたい あわせて読みたい