“紅白出場”AI美空ひばり「気持ち悪さ」の正体 法規制は必要か

2019/12/31 18:07

1988年の再起コンサートで歌う美空ひばりさん=東京ドーム (c)朝日新聞社
1988年の再起コンサートで歌う美空ひばりさん=東京ドーム (c)朝日新聞社

 第70回という節目を迎えた「NHK紅白歌合戦」。今年の目玉は、1989年に死去した美空ひばりをAI(人工知能)で復活させ、30年ぶりの新曲として12月18日に発売された「あれから」を披露することだ。

【過去20年間で出場回数の多い歌姫は誰だ!? ランキング表はこちら!】

 同曲のメモリアル映像では、北野武や指原莉乃らが出演。北野は「美空さんの最高傑作かと思うぐらい、いい歌」、指原は曲を聴いた時に涙を流し、「今は近くにいない人を思って聴くと、涙が出ちゃうんじゃないかな」とコメントした。

 AIで復活した美空ひばりについては、制作の舞台裏を描いたドキュメンタリーが、9月にNHKで放送されている。番組のホームページには、視聴者の感想として「めっちゃ泣いた。すごいプロジェクト。すごい番組。永久保存版。全国民に見て欲しい」、「今年の紅白歌合戦が今から楽しみです」といった称賛の声が掲載されている。一方、「ひばりさんへの冒涜になりかねないかと心配」と批判的な意見もあった。

 違和感を覚えるのは、一部の人だけではない。漫画家の小林よしのりは「美空ひばりを侮辱してはいかん」と題したブログを公開。「美空ひばりの歌はあんな平板なものではない。コンピュータの再現なんかダメだ」と書いた。74年から紅白歌合戦の白組司会を9回連続で務めた元NHKアナウンサーの山川静夫は、毎日新聞のインタビューで「僕はああいうの、反対だな」「声色はだいぶ近づけることができたようだけど、映像の出来栄えは『あの程度』でしょ」と批判している。

 では、技術がさらに発展して、歌声も容姿も本人のコピーになればいいのかというと、そうでもない。美空ひばりと親友だった女優・中村メイコは、ニッポン放送のラジオ番組で「一番単純な言い方をすると『嫌だ』。やっぱり本人がここにいて、本人が歌ってほしい」と話している。

 ただ、故人を「作品」としてよみがえらせることは、映画やドラマなどで過去から現在まで頻繁に行われてきたことだ。2018年にヒットした英国のロックバンド「クイーン」を描いた映画「ボヘミアン・ラプソディ」では、主人公を演じたラミ・マレックが、ボーカルのフレディ・マーキュリーそっくりに演じたことが話題を集めた。その姿を見て「故人への冒涜」と感じた人は少ないだろう。ところが、AI技術で美空ひばりを“コピー”すると「感動の再会か、故人に対する侮辱か」といった議論が起きる。著作権に詳しい福井健策弁護士は、その理由についてこう話す。

NEXT

映画やドラマで許されて、AIでは批判が起きる理由

1 2 3

あわせて読みたい

  • 美空ひばりに「おばさん、歌うまいね」と言ったアイドルとは?

    美空ひばりに「おばさん、歌うまいね」と言ったアイドルとは?

    週刊朝日

    3/2

    美空ひばり(AI歌唱)、「あれから-NHKスペシャル・バージョン-」配信開始

    美空ひばり(AI歌唱)、「あれから-NHKスペシャル・バージョン-」配信開始

    Billboard JAPAN

    11/27

  • 美空ひばり(AI 歌唱)、新曲「あれから」メモリアル映像公開 北野武、リリー・フランキーら出演

    美空ひばり(AI 歌唱)、新曲「あれから」メモリアル映像公開 北野武、リリー・フランキーら出演

    Billboard JAPAN

    12/24

    令和に紅白が変わる!? AIでよみがえる美空ひばり

    令和に紅白が変わる!? AIでよみがえる美空ひばり

    週刊朝日

    11/20

  • ミッツ・マングローブ「AIの難敵は倫理よりも性(さが)」
    筆者の顔写真

    ミッツ・マングローブ

    ミッツ・マングローブ「AIの難敵は倫理よりも性(さが)」

    週刊朝日

    10/16

この人と一緒に考える

コラムをすべて見る

カテゴリから探す