■「現金が安心」のままでは損をすることも

 最近では、街中の店はもちろん、屋台や銭湯、神社やお寺のさい銭にまでキャッシュレス決済を導入するところがあるなど、キャッシュレス化の波は、さまざまな場所に押し寄せています。とはいえ「まだまだ現金が安心」という人も多いでしょう。

 けれども、現金だけにこだわっていると、キャッシュレスを上手に活用している人との間にどんどん経済的な格差が生まれるのも事実。キャッシュレスには、お得を享受できる面があるからです。

 まず、ポイント還元事業では、キャッシュレスで支払いをすると、中小規模の小売店で買い物額の5%、コンビニなど大企業のフランチャイズ店では2%に相当するポイントが還元されます。

 ポイント還元は、対象店舗として経済産業省の認定を受けた店舗のみで受けられます。認定を受けた店舗にはステッカーやポスターが貼られているので、これを目印にしましょう。

 ポイント還元の方法は、大きくわけて次の二つです。

(1)クレジットカード、電子マネー、QRコードなどの各種決済サービスから「即時~3カ月後」にポイントやキャッシュバックで還元される。

(2)コンビニなどで「即時(実質値引き)」に還元される。

(1)の場合、ポイントの還元時期は、カード会社や決済サービスによって異なります。また、ポイントには上限があり、クレジットカードであれば、基本的にひと月あたり上限1万5千円分が一般的です。

 自分が持っているカードやサービスの還元方法や上限設定は、「キャッシュレス・ポイント還元事業」ホームページから確認することができます(トップページ掲載の「消費者向け説明資料」を見るか、「登録されている消費者向けサービスを探す」のページから各サービスの特設ページを確認)。なかには、電子マネーPパスモASMOのように、指定された時期に特定の場所に出向いて還元分のポイントを受け取るタイプのものもあるので、注意が必要です。

■コンビニだと実質2%の値引き

(2)は、コンビニなどで採用されているポイント還元の形態で、キャッシュレス決済をするとその場でポイント相当分が「値引き」という形で還元されるものです。実際にクレジットカードで支払ったレシートを見ると、「キャッシュレス還元」の金額(37円)が合計金額から引かれています。軽減税率対象の商品であってもなくても関係なく、総額から2%値引きされるので、お得感が大きく感じられる人も多いでしょう。

 また、ポイント還元事業とは別に、企業独自で「キャッシュレス決済だとポイント○倍」などのサービスを展開していることもめずらしくありません。(文/音部美穂)

監修◯岩田昭男(消費生活ジャーナリスト)1952年生まれ。早稲田大学大学院修士課程終了後、月刊誌記者などを経て独立。流通、情報通信、金融分野を中心に活動する。クレジットカード&電子マネー分野では、すでに30年間にわたって業界の定点観測をしている。主な著書に『キャッシュレス覇権戦争』(NHK出版)など。

※週刊朝日MOOK『定年後のお金と暮らし』から抜粋