高橋まつりさん。学生時代には「週刊朝日」のインターネット放送に出演していた
高橋まつりさん。学生時代には「週刊朝日」のインターネット放送に出演していた

「娘を失った悲しみはどんなに時が過ぎても癒えることはありません」

【写真】週刊朝日で活躍していたときの高橋まつりさん

 大手広告会社、電通の社員だった高橋まつりさん(当時24)が長時間労働などを苦に自殺して4年になる。まつりさんの命日となる25日、母の幸美さん(56)が手記を公表した。

 まつりさんは2015年12月25日に自らの命を絶った。当時の残業時間は認定されただけでも月に100時間を超え、長時間労働が常態化していた。まつりさんの過労自殺を受け、2017年1月に石井直社長(当時)は引責辞任。電通は労働基準法違反の罪で起訴され、同年10月に罰金50万円の有罪判決が言い渡された。労働環境は改善すると思われたが、今年9月、電通は残業時間の上限を定める労使協定を違法に延長させていたなどとして、労働基準監督署から是正勧告を受けた。

 幸美さんは手記で「ひとりの社員が死んだくらいでは変わらないだろうという私の予想通りでした」と怒りをあらわにした。AERA dot.の取材に対し、幸美さんが現在の思いを語った。

――高橋まつりさんが亡くなって4年がたちました。

 4年前の今日、まつりと電話した朝に戻れたら……。今も後悔しています。その思いは一度も変わりません。ずっとそのことばかり考えています。

――電話ではどのようなお話しをされたのですか?

 朝、まつりから「お母さんありがとう。さようなら。仕事も全てが辛いです。今までありがとう。お母さん、自分を責めないでね。最高のお母さんだったからね」とLINEが送られてきたんです。すぐに電話して「死ぬぐらいなら会社を辞めればいいんだからね」と声をかけましたが、まつりは「わかった」と力なく答えるだけでした。

――まつりさんは、お母さんに楽をさせてあげたいという思いから給与の高い広告業界に就職したそうですね。

 離婚して近くに頼れる親戚もいないなか、娘と息子と私で「3人で力を合わせて生きていこうね」と助け合ってきました。まつりはいつも家事を手伝ってくれたし「私がいっぱい働いてお母さんを支えないと」「お母さん、私がいくらお金をあげたら会社を辞められる?」と言っていました。女手一人で育ててきましたが、私が残業で帰りが遅いと、「労基署に訴えようよ」と、いつも私を心配してくれる娘でした。

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