どうみても勝てないアホや、戦う価値のないアホとの戦いを避けることは、最高の価値がある行動です。それを「みじめ」「負けた」と思う時点で、実は無駄なエネルギーを使ってしまっており、自分に集中できなくなっている状況なのです。

「戦わないで勝つことが最善」と孫子も言っていますが、誰も傷つけないで目的を達成できるのが最高です。気分をスカッとさせたいとか、勧善懲悪をなしたいといった思いは余計とも言えるでしょう。

 アホがアホなことをしていても、あなたの人生にダメージを与えない限り、基本的には放っておいて、うまくいけば祝福でもしてあげて、そしてあなた側の応援団にするのがいいのです。アホが成功したっていいじゃないですか? あなたもその成功をうまく使えばいいのです。

 世の中がどうなるか? あえて極端な言い方をすれば、多くの人にとってそれは知ったことではないのです。こっちゃないんです。それは仏教やとかキリスト教などとかの大宗教が解決を目指すようなテーマです。

「こういう世界にしたい」といったそんな大きなテーマまで考えると、本や自分の人生のも焦点がもぼけてしまいます。うんです。仏陀やキリストのような人になりたいのだったら、現世を離れて考えて行動してみてください。私にはその問いに対する答えは今のところ見つけられていません。

 ただ、「自分に集中する」という生き方改革が世界に広まれば、無駄な苦しみが減って、いい世の中になるという気はします。多くのアホは、暇だったり余計な雑念にとらわれていたりしているからこそこそ、アホなことをしているわけです。

 そんな彼らが自分の目的に集中してくれれば、周辺にいる人も巻き込まれずに済むのでしょう。

 また、アホがアホに見えるのはあなたのバリュージャッジメント(価値判断)であって、案外に彼らも苦労しているかもしれません。そんな想像力も大切です。

 優しい人が何を意味するのかわかりませんが、虫から動物まで、生き残るのはしたたかなやつです。あなたが「優しい人でありたい」と思うのであれば、したたかな勝者になってから優しくすればいいのです。

 もしかしたら、生存戦略としてのしたたかさがなければ、そういう優しさは淘汰されていくのかもしれません。優しく弱そうに自分を見せることで生き抜いている人もさすがですね。そういう同情を買うのがうまい人もいます。

 うまくいっているアホがいたら、その成功のどこがあなたの人生にとってメリット・デメリットになるかを冷静に判断しましょう。そして、したたかに行動です。

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田村耕太郎

田村耕太郎

田村 耕太郎(たむら・こうたろう)/国立シンガポール大学リー・クアンユー公共政策大学院兼任教授。ミルケン研究所シニアフェロー、インフォテリア(東証上場)取締役、データラマ社日本法人会長。日本にも二校ある世界最大のグローバル・インディアン・インターナショナル・スクールの顧問他、日、米、シンガポール、インド、香港等の企業のアドバイザーを務める。データ分析系を中心にシリコンバレーでエンジェル投資、中国のユニコーンベンチャーにも投資。元参議院議員。イェール大学大学院卒業。日本人政治家で初めてハーバードビジネススクールのケース(事例)の主人公となる。著書に『君は、こんなワクワクする世界を見ずに死ねるか!?』(マガジンハウス)、『野蛮人の読書術』(飛鳥新社)、『頭に来てもアホとは戦うな!』(朝日新聞出版)など多数

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