そしてそのころ、節約系インスタグラマーとしての地位を決定づける、あるヒット作が生まれる。

「それが『下味冷凍』と『簡単レシピ』です。下味冷凍とは冷凍パックに鶏肉や豚肉などの調味料を入れて混ぜるだけでおかずが一品できあがる時短料理のことです。レシピさえ把握していれば、10分~20分程度でおかずが三品できあがります。もちろん冷凍保存できるので、使うときは解凍してフライパンで炒めるだけ。時短と節約、それに保存と主婦が喜ぶ要素がウケて『いいね!』は1万5千件きました」

 こうしたヒット作が転機となり、5千人だったフォロワーは、2カ月間で7万人に激増。その間に念願だった企業案件も受注した。

「『下味冷凍』は他のインスタグラマーも投稿するようなブームとなり、お小遣い程度ではありますがインスタグラムで月2~3万円程度の収入を得られるようになりました。家計簿を投稿することでよりいっそう財布が引き締まり、家計も整えられました。お金にまつわる夫婦のけんかもなくなり、今は夢のマイホームに向けて貯金を続ける毎日です。約5年間で1千万円を貯めることができました。このまま順調にいけば5年後には家を購入できると思います」
 
 もちろん育児をないがしろにしているわけではない。料理や写真の編集、投稿など更新作業に使う時間は一日に4,50分程度。一日10~20件書き込まれるコメントへの返信は育児の隙間時間を利用しているという。

 取材の最後に、改めて「どうすればフォロワーを増やせますか?」と聞くと、「あくまでも主婦をターゲットにした場合」と断りながら「誰でもマネしやすい内容」と答えた。

「転機になった『下味冷凍』も方針を現実路線に変えたのも、言ってしまえば、“普通の主婦”である等身大の自分をみせただけです。インスタグラムで見かけるスターバックスは主婦の憧れだけど、子育てママが毎日行けるような場所じゃない。主婦はキラキラした世界を夢見がちですが、本当に得たい感情って実は共感なんだと思います。節約や時短料理って楽しい一方で、主婦にとってはストレスを感じる行為でもある。そうした絶妙なバランスのなかで四苦八苦している主婦に共感を与えつつ、誰でも簡単にマネできる内容にすること。それがフォロワーを増やすための近道だと思います」

(AERA dot.編集部)