「元NBA選手の田臥勇太は別格のスーパースター。会場内に現れるだけでオーラのようなものを感じる。でも他にも愛される選手がどんどん生まれている。どこか家族として見守っている感じで選手とファンの距離が近く感じるチーム」

「#4 ジェフ・ギブス」のサイン入りジャージを着用した2人組女性ファンは熱く語る。彼女たちはホームほぼ全試合を観戦しているという。

「田臥選手が人気あるのは当然。それ以外にも日本代表や若手のイケメン選手もいる。どの選手もしっかり伝えたい。そのためにはアリーナ内を歩くのが一番。個人名グッズなどをチェックする。目立たなくても人気ある選手もいる。そういう選手をビジョンに映したりすると盛り上がる」(前出ブレックス関係者)

 クラブが売り出したい選手と、ファンが愛する選手が異なる場合は多い。その温度差を埋めることで、ファンの満足度はより高くなる。スタンドの熱を直接感じさせる、という基本的なことを着実に行う。そこにホームを大事にする姿勢が見て取れる。

 現状、Bリーグはチームによって集客差がある。集客力があるチームは次々に自前の専用アリーナ建設案や大規模会場使用案を持っている。対戦カードに左右されることなく、ソールドアウトに近い状態が続くから、ビジネス的にも当然、次のステージへ向かおうとしている。

 東地区では、千葉ジェッツが千葉県船橋市に約1万人規模のアリーナ建設案を持つ。アルバルク東京は22年より代々木第一体育館の本拠地化を公表した。

 ブレックスアリーナ宇都宮に訪れたブレックスのファンが言う。

「やっぱり今はチケットを取るのが難しい。大きなアリーナを造って欲しい気持ちはある。でも立地が変わったり、選手との距離ができるのは嫌。そういう意味では、宇都宮という名前にしたのは納得。造るなら宇都宮に現在のものを超えるような素晴らしいものが欲しい。この町がホームだから」

「宇都宮=初心を忘れず地元を大事にする」とファンは改名を概ね好意的に受け止めている。しかし大事なのは今のスタンスを何十年も継続すること。先輩にあたるJリーグでは経営難からのクラブ消滅や吸収合併、本拠地移転などの例がいくつもある。本当の意味で地元に密着するには時間がかかる。その辺はビジネス優先で移転を行うアメリカを反面教師とすべきだろう。

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