ブレックスが改名に踏み切った理由には、Bリーグから出された26年以降のクラブライセンス基準構想が影響したという。クラブには「魅せるアリーナ」「ホスピタリティ性の高いアリーナ」「自由に使えるアリーナ」など「ソフト・ハードの一体経営」をより重視することが今後求められた。そこで宇都宮市との連携をより密にすることで、やりたいことができるアリーナ実現を重視した。これは地元を一層大切にすることとも同義語である。

 ブレックスの本拠地は、ブレックスアリーナ宇都宮。80年『栃の葉国体』に合わせて79年に開館した宇都宮市体育館である。築年数は長いが適材適所の改装を重ね、ブレックスの聖地として愛されている。JR宇都宮駅から徒歩約20分、バスで約10分ほどのアクセス良好な場所に位置。強豪人気チームだけあり、今季アリーナには平均4500名以上のファンが駆けつけている。

 しかし、ブレックスはその状況にあぐらをかくことなく新しいことにチャレンジを重ねている。「勝てばお客さんは入る」という考えはスポーツ界では通用しなくなった。アリーナという『ハード』と、それを活用した演出など『ソフト』両方へのこだわりに重きを置く。

 ブレックスアリーナ宇都宮の天井中央には4面のビジョンが吊り下げられ、様々な映像が流されている。2階席と1階席の間の壁面にも場内一周する形でLEDリボンビジョンを設置。演出機材の充実ぶりは本国NBAの本拠地にもひけをとらないほどの充実度だ。

「宇都宮は地方都市なので、東京などに比べて娯楽も少ない。バスケットだけでなく、多くの楽しみを感じて帰って欲しい。ここまで整備する初期投資は勇気もいる。ビジネスとしての採算も考えなければならない。でも会社の本気度はわれわれにも伝わるし、いかに有効活用するかを常に考えている」(ブレックス演出関係者)

 来てくれたお客さんをとことん楽しませたい。クラブのコンセプトが徹底されている。試合日は場内開場とともにスタンドの埋まる速度が速い理由も、そのあたりにあるのではないか。居心地が良く、ワクワクできる楽しい空間なのだ。

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ブレックスの戦略