足で魅せたのが五十幡亮汰(中央大・中堅手)だ。中学時代は陸上の全国大会でサニブラウン・ハキームに100m、200mのいずれでも競り勝って二冠を達成した俊足の持ち主。東海大戦では第1打席に四球で出塁すると、ソフトバンク2位指名の海野隆司(東海大)から見事に盗塁を決めて見せた。また第3打席のサード内野安打では一塁到達3.87秒、第4打席ではバントで一塁到達3.57秒というタイムも叩き出している。

 昨年までと比べて体つきが一回り大きくなり、打撃に少しずつ強さが出てきているのもプラス要因で、第2打席では左中間にツーベースも放った。センターの守備でも海野の右中間に抜けそうな打球を自慢の俊足で追いつき、その守備範囲の広さを見せた。また、小柄だが肩の強さも抜群で、低くて伸びる返球は迫力十分だ。足のスペシャリストとして今後も注目を集めることは間違いないだろう。

 プロから需要の高いショートでは元山飛優(東北福祉大)と瀬戸西純(慶応大)の二人が双璧。元山はとにかく守る時の姿勢の良さが目立つ。重心が上下動せずに素早く動くことができ、三遊間の深い位置からも矢のような送球を見せる。180cm、68kgというプロフィールからも分かるようにまだ体つきが細く、バッティングに波があるのは課題だが、ミートのセンスも決して悪くない。パワーがついてくれば、上位候補に浮上することも十分に考えられるだろう。

 瀬戸西は大学球界の守備名人。打球に対する反応が抜群に良く、球際の強さも天下一品。グラブさばき、捕ってから投げるまでの速さなどは思わず唸らされるものがある。非力な打撃が課題だが、今大会は打っても10打数5安打6打点、長打4本と見事な成績を残した。このバッティングを続けられればプロも放ってはおかないだろう。

 残念だったのが、大会前に目玉と見られていた山崎伊織(東海大・投手)が故障で登板できなかったこと。高校時代にも肘の故障に苦しんだだけに、しっかり治して春以降は元気な姿を見せてもらいたい。また層の厚い投手陣の中で登板機会のなかった佐藤宏樹(慶応大・投手)の今後の巻き返しにも期待したい。(文・西尾典文)

●プロフィール
西尾典文
1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

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西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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