下川裕治(しもかわ・ゆうじ)/1954年生まれ。アジアや沖縄を中心に著書多数。ネット配信の連載は「クリックディープ旅」(毎週)、「たそがれ色のオデッセイ」(週)、「東南アジア全鉄道走破の旅」(毎月)、「タビノート」(毎月)
下川裕治(しもかわ・ゆうじ)/1954年生まれ。アジアや沖縄を中心に著書多数。ネット配信の連載は「クリックディープ旅」(毎週)、「たそがれ色のオデッセイ」(週)、「東南アジア全鉄道走破の旅」(毎月)、「タビノート」(毎月)

アメリカドルの100ドル新札。ちょっと数えにくい(ダッカの両替商店で)
アメリカドルの100ドル新札。ちょっと数えにくい(ダッカの両替商店で)

「おや?」と思って立ち止まる。そしてはじまる旅の迷路――。バックパッカーの神様とも呼ばれる、旅行作家・下川裕治氏が、世界を歩き、食べ、見て、乗って悩む謎解き連載「旅をせんとや生まれけむ」。第13回は「米ドル札」について。

【ちょっと数えにくい100ドル新札はこちら】

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 ミャンマーではどうしても受けとってもらえない20アメリカドル札を1枚もっている。中央の折り目に沿って2センチほど切れ目がある。古い札だが、それ以外の損傷はない。もとはアメリカ西海岸の雑貨屋でお釣りとして受けとった紙幣だ。

 いま、ミャンマーで流通している紙幣は、基本的にチャット紙幣だ。しかし、以前はアメリカドルがかなり流通していた。自国通貨に信用力がなかったからだ。その名残か、ドル紙幣はいまだ頼りにされているらしく、ホテルなどではドルで宿泊代を伝えられることが多い。そんなとき、この20ドル札を混ぜて払うのだが、必ず返される。どの街でも同じだ。彼らのなかには、偽札や両替率が悪くなってしまうドル札を見分けるマニュアルのようなものがあるらしい。それに引っかかってしまうのだ。

 アジアでドル札を簡単に受けとってくれるのは、ミャンマー以外では、ベトナム、カンボジア、ラオス。それらの国に持ち込めば、受けとってくれるかもしれない。いや、普通に銀行で両替できる可能性は高い。アメリカに行くときに持参してもいい。アメリカ国内で流通している紙幣はかなり傷んでいる。アメリカ人は財布をもたず、ジーンズなどのポケットに紙幣を入れている人が多い。しわくちゃな紙幣が平気で流通している。

 先日、バングラデシュのダッカの両替商にアメリカドルをもち込んだ。僕はバングラデシュ南部のコックスバザールにある小学校の運営にかかわっている。校舎が老朽化し、その修繕費用にクラウドファンディングを利用した。その寄付金をバングラデシュにもっていったのだ。

 できるだけ両替率をよくするために、まず日本でアメリカドルに両替し、それを持参した。すべて100ドル札。このほうが日本円をもっていくより両替率がいい。日本で受けとったドル紙幣には旧札と新札が混じっていた。

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下川裕治(しもかわ・ゆうじ)/1954年生まれ。アジアや沖縄を中心に著書多数。ネット配信の連載は「クリックディープ旅」(隔週)、「たそがれ色のオデッセイ」(毎週)、「東南アジア全鉄道走破の旅」(隔週)、「タビノート」(毎月)など

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