同セミナー登壇者の山内敏正医師(東京大学大学院医学系研究科教授)は、「家族に言いにくいという雰囲気があること自体が問題です」と強調します。

「重症低血糖のリスクがあるけれども周囲に言えないということがもしあるのであれば、発症・再発を防ぐことができない。コミュニケーションがふつうにとれる社会ができていくように、皆さんのご協力をお願いしたいと思います」(山内医師)

 こうした現状を踏まえ、私たちは何ができるのでしょうか。

「重症低血糖について、患者だけでなく、患者のそばにいるキーパーソンにも知ってもらう必要があります。診察の際はぜひキーパーソンとなる人にも一緒に診察に来てほしいです。また知識があっても不安だけ持っているのでは仕方がありません。血糖値を家でも測る、安心することが重要です。そのためにも、何かあったときに周囲の人が血糖値を測ることができるよう、バックアップする態勢をつくることが大事です」(岩倉医師)

 糖尿病患者の家族を対象とした同調査では、79%の家族が、重症低血糖の予防・対処のサポートをしたいと回答しています。「家族に負担をかけたくない」と不必要に配慮する必要はないのかもしれません。

(文/白石圭)