国中を熱狂させたラグビー日本代表 (c)朝日新聞社
国中を熱狂させたラグビー日本代表 (c)朝日新聞社

 ラグビーワールドカップ2019は2日に決勝を迎える。全チケットの99%が売れ、日本戦のテレビ視聴率は最高で40パーセントを超え、日本が敗退した後、外国チーム同士の対戦となった準決勝も視聴率は20パーセント近い高い数字を記録した。ついこの前までマイナー競技だったはずのラグビーが、なぜこれほどまでに盛り上がったのか。

「ラグビーの持つ規律、自己犠牲が日本人好みだったのではないか。日本代表の愚直なまでの『One Team』、組織への献身ぶり、ここぞという時の勇気のある個人のパフォーマンスが見る人の心を打った」――、大会を中継している日本テレビの小杉善信社長は10月28日の定例記者会見で高視聴率の理由をこう分析した。

 日本テレビ系が中継したプールステージ最終戦の日本―スコットランド戦の視聴率は平均39.2パーセント(関東地区)、NHKが中継した準々決勝の日本―南アフリカ戦は今年放送された全番組でトップの平均41.6パーセント(同)だった。さらに、日本テレビ系中継の南アフリカとウェールズによる準決勝も19.5パーセントを記録している。

 確かに、規律や組織のために尽くす自己犠牲の精神は、しばしばラグビーの特徴として語られ、企業が大学ラグビー部員を好んで採用する理由とも言われてきた。しかし、ラグビーの特徴と言われるもの自体は少なくとも昭和の時代から存在する。今回これだけ社会にブームを起こしたのは、これまでラグビーがマイナー競技だったがために、そうした価値がこれまで大量消費されず、ワールドカップをきっかけにラグビーに触れた人たちに極めて新鮮に映ったからだろう。

 ラグビーは難しい、ルールが分からないとよく言われる。長年のラグビーファンは観戦初心者になんとか競技の面白さを伝えようとしてきたが、なかなか難しかった。しかし、今回のワールドカップで「にわかファン」とも呼ばれた、新たにラグビーに関心を持った人たちの多くは、攻防の面白さや駆け引きといった細かいことを気にしなかったのではないか。

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「一生に一度だ。」