「政府は森の動物の狩猟も厳しく制限している。インディアンはもともと狩猟民族。私たちの生活手段は、ことごとく環境問題とぶつかるんですよ」

 理不尽さが残った。インディアンの捕獲する量は、環境を破壊するほどの量ではない。環境に影響を与える捕獲は、ビジネスのための漁だった。

 欧米人がこの一帯に入り込んだきっかけは金だった。ゴールドラッシュである。彼らは力でインディアンの土地を手に入れていく。やがてカナダという国に組み込まれ、インディアンは教育を受ける機会を手に入れる。そこで彼らが学ぶ内容のなかには環境問題も含まれている。なにかおさまりのつかない環境問題が横たわっている。

 話をしていると、山から銃声が聞こえた。彼の体がピクッと動いた。狩猟民族の血が反応している気がした。

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下川裕治

下川裕治

下川裕治(しもかわ・ゆうじ)/1954年生まれ。アジアや沖縄を中心に著書多数。ネット配信の連載は「クリックディープ旅」(隔週)、「たそがれ色のオデッセイ」(毎週)、「東南アジア全鉄道走破の旅」(隔週)、「タビノート」(毎月)など

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