これまでの動物実験の結果では、抗生物質で腸内細菌を殺してしまうと、食物へのアレルギー反応を起こしやすくなることがわかっています。また、早産の赤ちゃんがかかりやすい壊死(えし)性腸炎という病気がありますが、ミルクではなく母乳を与えた方が発症を抑えられることがわかっています。アレルギー発症のメカニズムはまだ確定的なところまではわかっていませんが、このような多数の研究結果をつなぎ合わせて、少しずつその仕組みが明らかになってきているのです。

 しかし、実際に赤ちゃんにいつどんな種類のミルクを与えたらよいかというのは、まだはっきりしていません。

 これまでにも、生後3日までの牛乳タンパク質摂取とアレルギーの関係を調べた研究結果は複数ありましたが、その結果は一致していませんでした。今回の研究により、やはり生後3日までの摂取は悪影響がある可能性は高まったと考えられるでしょう。

 一方で、2010年にイスラエルから発表された研究では、生後2週間までに牛乳タンパク質の入ったミルクを飲んだ赤ちゃんが0.05%しか牛乳アレルギーにならなかったのに対し、生後3~6カ月頃に初めてミルクを飲んだ赤ちゃんは1.75%の子が牛乳アレルギーになっていたという結果も出ています(※2)。

 牛乳タンパク質を摂取するのが生後3日までだと食物アレルギーを増やすけれど、生後4日~生後14日なら食物アレルギーが減る、というのは両立しうるので、この結果は今回の研究と相反するとはいえません。しかし数日のタイミングで結果が変わる可能性があるとすれば、良いタイミングがいつなのかはさらなる研究が必要です。

 また、摂取を開始するタイミングだけではなく、摂取する量や、その後どのようにミルクを継続したのかなど、他にも多くの要因が関わっている可能性があります。今後さらに研究が進めば、専門家の議論により、また新しいガイドラインなども整備されていくかもしれません。

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西洋医学の視点が変化しつつある