※写真はイメージです(写真/Getty Images)
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「赤ちゃんは抱っこされるとき、股関節を脱臼することがある?」「股関節を骨折したら寝たきりになる?」近年、高齢者で特に深刻な問題となっている転倒による股関節の骨折。週刊朝日ムック『首腰ひざのいい病院2020』では、病院で医師に直接聞きづらい疑問を挙げ、専門医に聞きました。九州大学病院整形外科教授の中島康晴医師がQ&A形式で回答します。

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Q:赤ちゃんは抱っこされるとき、股関節を脱臼することがある?
A:横抱きで両脚が伸びた状態だと脱臼しやすくなります

 抱っこの仕方によって、赤ちゃんの股関節が脱臼しやすくなることがあります。「発育性股関節形成不全」と呼ばれ、1千人に1~3人の割合でいるといわれています。

 赤ちゃんの脚は、両脚と股関節をM字型に曲げて開き、よく動かしている状態が望ましいとされています。両脚がまっすぐに伸びた状態で、自由に股を開けないと股関節が徐々に脱臼することがあります。

 脱臼を予防するためには、「コアラ抱っこ」が推奨されています。コアラが木につかまっているように、赤ちゃんを正面で縦に抱くと両脚が自然とM字型に開脚し、抱いている人の胸にしがみつくような形になります。赤ちゃんは脱臼しても痛みがなく、気づくことができません。このため3~4カ月健診で脱臼をチェックし、早期発見することが重視されています。

 また、寛骨臼が体重を支える面積が小さくなる寛骨臼形成不全は、赤ちゃんの頃の影響で起こることもあります。さらに年齢を重ねるにつれて、股関節の一部の軟骨がすり減って変形してしまう変形性股関節症を誘発することがあります。

Q:股関節を骨折したら寝たきりになる?
A:立ったり歩いたりできなくなり、寝たきりになります

 股関節付近の大腿骨骨折のことを「大腿骨近位部骨折」といいます。骨粗鬆症がベースにあるため、70歳以上の女性に多く、患者数は年間約20万人に及びます。高齢化によって年々増加しているため、股関節の骨折は社会問題になっているのです。問題となるのは、骨折すると股関節のあたりに痛みが生じ、ほとんどの場合、立ったり歩いたりすることができなくなるという点です。

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要介護の原因「骨折・転倒」はどれくらい多い?