CEFRへのスコアや級の対応づけは民間試験実施団体がそれぞれで行っているが、大学入試での利用にあたっては、言語テストやCEFR の研究を専門とする大学教員などが、その検証作業を行った。ただ、1人の受験者が異なる試験を受けた場合、両方のスコアがCEFR の同じレベルに入るかどうかまでの検証は行われていない。CEFR で測ることについては試験団体からも「全面的に賛同はできない」という声があがる。

「大学にとっては一定の尺度がなければ異なる試験を受けている受験者のレベルを比較しづらいので、CEFRを採用する意味は理解できる。ただ、複数の民間試験を同列に測ることをよしとするなら、試験を選んで受ける意味が薄れる」(民間試験団体関係者)

■大学入試になぜ4 技能試験が必要?

 民間試験導入の直接のきっかけは13年、経済同友会が発表した提言書にある。そこには「現在の大学の英語入試を変え、実用的な英語力を問い国際的に通用する外部資格試験の導入を訴えたい」とあり、国際的という理由でTOEFL の活用が勧められている。それを受け、安倍晋三首相の私的諮問機関である教育再生実行会議もTOEFL などの民間試験の活用を提言に盛り込んだ。その後、文科省内の有識者会議や審議会などを経て、小学校での英語(外国語)の教科化などとともに、大学入試改革として英語の民間試験導入が発表された。

 高校までの英語教育と大学入試を一致させることも大きな目的の一つだ。現在の学習指導要領では「コミュニカティブな英語力」をつけるため「4技能をバランスよく」養う教育方針が取られている。しかし大学入試が変わらなければ、高校の英語教育は変わらないため、入試を変える、というわけだ。

 千葉県立成田国際高等学校で英語を教える下村明教諭は、学習指導要領が示す通りに、たとえば「聞いたり読んだりしたことに基づき、各自の考えなどについて生徒同士でディスカッションを行い、最終的な考えを書く」といった授業を、英語で行っている。

「高校卒業後、英語が必要になったときに、英語は使えるものだと実感したことを思い出してほしいという思いで授業をしています。小学校から中学、高校へと連携して4技能を養う教育方針には賛成ですし、その能力を大学入試で問うという狙いにもうなずけます。ただ、来年度からの方法はあまりにも複雑です。それが原因で生徒に負担がかかり、普段の力を出せなくなることを最も心配しています」(下村教諭)

 試験の変更で最も大きな影響を受けるのは、他でもない受験生だ。すでに一部の試験で申し込みが始まっているいま、さまざまな問題に国がどう応えるのかが問われている。

(文/稲田砂知子)