国連で演説する文在寅大統領=9月24日 (c)朝日新聞社
国連で演説する文在寅大統領=9月24日 (c)朝日新聞社
過去には日米韓で首脳会談をしたこともあったが…=2017年7月6日 (c)朝日新聞社
過去には日米韓で首脳会談をしたこともあったが…=2017年7月6日 (c)朝日新聞社

 安倍晋三首相とトランプ米大統領は25日(日本時間26日)、ニューヨーク市内のホテルで首脳会談を行い、日米の貿易協定交渉が最終合意に達し、共同声明に署名した。10月4日に召集される臨時国会で承認されれば、来年1月1日に協定が発効される予定だ。

【写真】かつては日米韓で首脳会談をしたこともあったが…

 安倍首相は「日米双方にとって(利益のある)ウィンウィンとなる結論を得ることができた」と自画自賛している。だが、実態はそうはなっていない。東京大学の鈴木宣弘教授(農業経済学)は、こう話す。

「TPP(環太平洋連携協定)より速いスピードで牛肉の関税を38.5%から9%まで削減し、牛肉の低関税が適用される数量の限度(セーフガード)は、米国向けに新たに約24万トンが設定されました。しかし、米国が離脱する前にTPPで設定されたセーフガードの数量(61万トン)は、米国がTPPを離脱した後も減っていません。現在のTPP参加国が低関税枠の削減に応じるのは簡単ではなく、日本にとって、米国の分が『二重』に加わることになりました」

 日本政府は米国との貿易交渉を始めるにあたり、TPPの水準が上限だと説明してきた。ところが、実質的に牛肉の低関税枠が広がったことで、「TPP超え」が明らかになった。

 トランプ大統領は、日本が対米貿易黒字を続けていることを理由に、自動車への関税を25%まで引き上げると脅しをかけた。その結果は上々だったようだ。今回、日本が牛肉以外にも豚肉や小麦、ワインなどで関税の引き下げや撤廃に応じたことで、「(新しい協定で)日本は70億ドル相当の農産物について市場を開放する」と宣言した。

 では、安倍政権は米国から何を勝ち得たのか。燃料電池やエアコン部品などでは関税撤廃で合意したものの、日本の米国向け輸出総額の29%を占める自動車、同6%の自動車部品は継続協議となった。米国が離脱する前のTPP交渉では、自動車(関税2.5%)が協定発効から25年目、トラック(関税25%)は30年目で撤廃されることになっていたが、いずれも米国側に押し切られ、合意に入れることができなかった。

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WTO協定違反との指摘も