一方、歯周病以外の病気が原因という場合もあります。歯科材料による金属アレルギー、口腔アレルギー症候群などです。

 歯科材料による金属アレルギーではいわゆる銀歯が原因になります。銀歯は銀や銅、パラジウムなどの金属があわさっていますが、これらの金属が唾液(だえき)によって反応を起こし、口の中に溶け出すことがあります。

 溶け出す量はごく微量なのでからだに問題はありませんが、この金属にアレルギーがある人の場合、反応として口の中がかゆくなったり、からだにかぶれなどの症状が出ることがあります。

 金属アレルギーが疑われた場合は、疑わしい材料を含むパッチテストを直接、皮膚に貼付し、判定します。検査の結果、陽性だった場合は金属を取り外して、セラミックスなど金属を含まない詰め物やかぶせ物に替えることで解決します(歯の場所によっては治療費が自費になります)。

 最近ははじめから、「金属アレルギーが心配だから」と自費でこうした材料を選ぶ人も増えてきました。

 口腔アレルギー症候群は生の果物や野菜を食べた後に短い時間(数分から10分程度)唇や口の中、のどなどが腫れたり、かゆくなったりする、アレルギーの一種です。

 花粉症があると花粉症の原因となるたんぱく質と似た構造を持つ食材で口腔アレルギー症候群が起こりやすいことがわかっています。

 なお、口腔アレルギー症候群の原因となる食べ物としてはリンゴやサクランボ、桃や梨、メロン、キュウリ、スイカ、などがあります。

 多くの場合は時間経過とともに症状がなくなりますが、アナフィラキシーショックと呼ばれる重篤な症状につながることもあるので、注意が必要です。

 このため、口腔アレルギー症候群が疑われる場合はすみやかに一般の内科などの医療機関に紹介しています。

 このほかごく初期のむし歯や親知らず、ストレスなどでも「歯ぐきがむずがゆくなる」という歯科医師もいます。

 いずれにしても、痛みやかゆみといった自覚症状は、何らかの異常を示すからだの大事なサインですから、早めに歯科医院にみてもらったほうがいいでしょう。

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若林健史

若林健史

若林健史(わかばやし・けんじ)。歯科医師。医療法人社団真健会(若林歯科医院、オーラルケアクリニック青山)理事長。1982年、日本大学松戸歯学部卒業。89年、東京都渋谷区代官山にて開業。2014年、代官山から恵比寿南に移転。日本大学客員教授、日本歯周病学会理事を務める。歯周病専門医・指導医として、歯科医師向けや一般市民向けの講演多数。テレビCMにも出演。AERAdot.の連載をまとめた著書『なぜ歯科の治療は1回では終わらないのか?聞くに聞けない歯医者のギモン40』が好評発売中。

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