「イジリは悪じゃない」ロンドンブーツ1号2号・田村淳 (C)朝日新聞社
「イジリは悪じゃない」ロンドンブーツ1号2号・田村淳 (C)朝日新聞社

 9月10日放送の「ロンドンハーツ」(テレビ朝日系)で行われたのは、田村淳らが深夜に悩みを抱えた芸人の家を訪れ、彼らの相談に乗るという企画だった。

 最初に訪れたのはにゃんこスターの自宅だった。男女コンビのにゃんこスターは現在、一つ屋根の下で同棲している。だが、アンゴラ村長がスーパー3助に不信感を持っているのだという。家で仕事の話をするのを嫌がる、束縛が激しい、というのがその理由だった。スーパー3助が心を入れ替えなければ同棲を解消することにする、という結論が出てこのパートは終わった。恋愛関係にある男女が一緒に暮らし、コンビとしてお笑いを続けていくことの難しさがあらわになっていた。

 抱えている悩みがより深刻だったのは、次の訪問先であるお笑いトリオ・我が家の坪倉由幸の方だった。坪倉はトリオとしての仕事が激減していることに危機感を覚えていた。メンバーの1人である杉山裕之とも大喧嘩をしてしまい、それ以来単独ライブを行うこともなくなった。

 喧嘩の主な原因は杉山の酒癖の悪さだ。酒を飲むと暴力をふるったり説教をしたりすることもあり、芸人の間では鼻つまみ者になっている。何度もトラブルになっていて、番組内で禁酒を宣言したこともあったが、誓いは守られていなかった。坪倉も酔っ払った杉山に殴られたりタバコを投げられたりしたことがあった。

 途中から我が家の杉山と谷田部俊も加わり、話し合いが行われることになった。杉山は酒癖の悪さで失敗を繰り返していることを反省しつつも、坪倉が自分をイジった後でフォローをしないことに不満を漏らした。イジった後でウケなかったときにフォローもしないとただの「悪」になってしまう、と語った。ここで、話を聞いていた淳が杉山を諭すように持論を述べた。

「悪じゃないんだよ。それは俺も何度もあるけど、亮にいろいろ仕掛けて上手くいかなったこともあるけど、俺のスタートは悪じゃ絶対にない。坪倉もただの悪意だけで人をイジるなんてしないよ。このバラエティの現場において、何か仕掛けるときは『うまくいけ!』とか『面白くなれ!』っていう思いを込めたイジリしかないよ。で、うまくいかなかったから悪になるんじゃなくて、うまくいかなかったらそれを反省して次に生かすしかないよ。それは悪にはなんない」

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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