小熊英二が日本の30年を総括 何が変わり、何が変わらなかったのか? (1/7) 〈dot.〉|AERA dot. (アエラドット)

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小熊英二が日本の30年を総括 何が変わり、何が変わらなかったのか?

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日本社会は激変したというイメージとは裏腹に、「変わらなかったこともある」と語る小熊教授=2019年8月9日、ブックファースト新宿店

日本社会は激変したというイメージとは裏腹に、「変わらなかったこともある」と語る小熊教授=2019年8月9日、ブックファースト新宿店

正規・非正規・自営業の推移グラフ

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国政選挙得票数グラフ(2012年以降)

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 歴史社会学者の小熊英二・慶応大学教授が、4カ月連続の著書刊行を記念し、講演会を開催。著書『日本社会のしくみ』(講談社現代新書)や『私たちの国で起きていること』(朝日新書)で書かれたことを中心に日本の30年について話した小熊教授。今、ノリにノッてる小熊教授の“生トーク”を聴こうと満員の会場は熱気に包まれた。講演会の様子を特別に公開する。

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 どうもみなさん、おいでいただきましてありがとうございます。小熊英二です。「30年で変わったこと、変わらなかったこと」というお題をいただきました。最初は、日本社会はどのような人々によって、どのような生き方で構成されていたのかについて3類型で説明します。後半は、日本社会の変化が政治にどう影響しているのかについて話します。

日本社会のしくみ』では、日本社会を「大企業型」「地元型」「残余型」という3つの生き方を仮定して分析します。大企業型という生き方は、中堅以上の企業に新卒で採用され、定年まで勤める生き方です。安定した雇用と比較的高い賃金が保障されていますが、大卒者が多く、都市部に住んでいることが多いので、教育と住宅ローンにお金がかかります。正社員で雇われた人だと厚生年金をもらえます。厚生労働省のモデルによると、夫が40年以上、中堅以上の企業に勤め、妻が専業主婦であった場合、月額22万円です。これが総務省の家計調査にある高齢無職2人世帯の月額支出27万円に比べると、月5万円少ない。5万円×12カ月で年60万円、それが95歳までの30年間だと約2000万円の貯金が必要だ、といって大騒ぎになりました。

 そもそも、厚生年金の支給額は1973年に現役世帯の60%をめどとしました。73年時点の男性の平均寿命は71歳。だいたいそのぐらいで死ぬということを前提に制度設計していたのですが、95歳まで生きるとなると問題が生じます。

 試算するのは大変難しいのですが、大企業型は2017年に国民の約26%と私は推計しています。国民の約4分の1です。それ以外の人たちはどうしていたのかというと、自営業とか農林水産業とか地元の小企業などで働いていた。これが2番目の「地元型」です。

 所得が高くなくても、持ち家があり地域に定住していれば、隣近所から野菜やお米をわけてもらったり、子どもの世話を頼めたりで現金支出は少なくて済む。国民年金は20~60歳まで毎月保険料を納めたとしても受給額は6万円台です。夫婦2人で12万円。平均ではもっと少ないでしょう。都市部であれば月6万円では生きていけません。ただ、今言ったように持ち家や畑があり、食糧を隣近所からわけてもらえたり、長男夫婦が同居したりというモデルであれば、月6万円でも暮らせると考えることは可能です。国民年金は1950年代末に作られた制度でしたが、もともと自営業者は年をとっても働くのが前提の制度で、いわば「あくまで補助」という認識でした。


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