北朝鮮がミサイルを発射した2017年11月29日。菅官房長官の臨時記者会見はミサイルの着弾よりも早く、午前4時から始まった。安倍晋三首相の指示や北朝鮮への抗議など、事務方が用意した文書をよどみなく読み上げると、質疑もなく立ち去った。かつてのように記者が間に合うように一定の時間を設けて開始する配慮はない。報道機関に頼らなくても会見の様子をインターネット中継できるようになった官邸は、記者がいようが、いまいが、自らの都合で記者会見を行うことができるようになり、「危機管理に強い」というイメージを国民に植え付ける「記者会見」を行えるようになったからだ。

 菅官房長官は、番記者やメディア関係者への面倒見がいいとされているが、既存メディアに頼っているわけではないのである。冒頭のインタビューでは、菅官房長官は2年前の誕生日に番記者からプレゼントされた革製バインダーをわざわざ持ち出し、番記者との親密さを明るみに出した。こうした行為によって菅官房長官が失うものはないが、メディア側は、読者・視聴者から政治との距離感に不信感をもたれ、権力と対峙する力をそがれていく。

「将来の首相候補」と目され、今回の内閣改造で初入閣した小泉進次郎環境相も既存メディアのあり方には冷ややかだ。

 自民党総裁選を前に動向が注目されていた2018年6月、小泉氏が自民党の若手国会議員らとまとめた国会改革案を発表するときに選んだのは、ネットメディア「バズフィード・ジャパン」だった。

 2日前に事前にインタビューに応じ、小泉氏側で作成した概念図もちりばめた記事は「画期的な改革案」という見出しがつけられて、記者会見の5時間前に配信された。周到に準備された発信で、記者クラブに所属する既存メディアの記者からは「進次郎はメディアを選別するのか」と憤る声もあがったが、後の祭りだった。

 小泉氏はその後も「虚構のようなフレームをつくりあげるのが、通称『平河』といわれる(記者クラブ)」とメディアの編集への不信を口にし、ニコニコ動画の責任者にぶら下がり取材の全編中継を求めることもあった。

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