親の勧めで、中学生のときに二重手術を受けた会社員の女性。「やったのにその程度かと思われるんじゃないかという恐怖も出てくる」とも語った(撮影/金城珠代)
親の勧めで、中学生のときに二重手術を受けた会社員の女性。「やったのにその程度かと思われるんじゃないかという恐怖も出てくる」とも語った(撮影/金城珠代)

 高校1年の夏休み、娘の目標は美容整形だった。

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「整形します」と宣言されたとき、母親のAさん(51)は驚きと同時に、ついに来たかとも感じていた。娘が義母譲りの涼しげな一重を毎朝、アイテープで二重にするようになったのは中学生のころ。チャームポイントだと伝えてきたつもりだったが、本人は「パパとママはきれいな二重なのに……」「整形したい」と寝言のように繰り返すようになった。

 高校に入ってからアルバイトを始め、それまでのお年玉や小遣いを合わせると娘の貯金はすぐに50万円を超えた。手術方法や金額、病院の選び方、リスクについて自らインターネットで調べ上げ、夫の知り合いの美容外科医のクリニックでカウンセリングを受けて、保護者のサインが必要な承諾書を持ってきた。口出しされないよう、手術費用の10万円は「自分で払うから」と言う。術後の経過を考えて、手術日を夏休み直前の3連休にするという抜け目のなさも娘らしかった。

「二重手術なんて、みんなやっていますよ」

と知人の美容外科医は言い、夫も

「毎日、テープで二重にしているぐらいなら」

と受け入れた。

 Aさんはすぐに同意できなかったものの、考えれば考えるほど止める理由もわからなくなったという。親子と言えど、あの子の人生はあの子のものだし、「一重は悪いものじゃない」といくら言っても、娘の心には響かないだろう。「親からもらった体にメスを入れるなんて親不孝だ」という、よくある批判も薄っぺらく感じた。サインするまでに悩んだ期間は2日間。しかしそれは、受け入れるための時間だったのかもしれないとAさんは話す。

「あの子が笑って、前を向いていられることが大事。それなら立ち止まっているよりも、一緒に前に進もうと決めました。手術が失敗したり依存してしまったり、良くないことが起きたら全力でフォローする。でも今後、目以外のパーツを変えたら許さないということは伝えています」

 アメリカ、ブラジルに次いで世界3位の美容整形施術数を誇る日本。整形ユーチューバーが人気になり、整形を告白した芸能人が共感されるなど、一昔前とは整形に対する意識が変わってきていると言えるだろう。

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5人に1人は「整形したい」