「強い時の特徴として速い球を投げるエースがいる。やまびこ打線、と言われるように打撃は伝統的に良いチーム。甲子園で勝てる時には力で抑えられる投手がいた。あとは打線の核に長距離砲、文字通りの遠くへ飛ばす四番打者がいる。これが池高の伝統です」

 真鍋社長は、実際に池田野球の内側にいた。学校への思いは人一倍に強いが、客観的に現在の池田に足りない部分も見えている。

「甲子園で感じたのは、洗練されているというか、システマチックでスマートな野球に見えた。地方チームはその周囲でしか練習試合が組めない。都会のチームがどういう野球をやっているかも知らなかった。試合前練習を見ても効率的で、我々の野球はやはり雑草だと感じた。そこは今も変わらないし変えられない」

ーー徳島ではなく甲子園で勝てるチームを目指して。

 池田を後方から支えている地元の存在も大きい。地元企業ヤマト重機の楠本正志会長は11年末に学校近くの物件を自ら買取り、寮として提供。そのほかにも銭湯と契約し生徒が自由に使えるようにした。

「さわやかイレブン、が注目されたこともあり、近郊の飛び抜けた選手が、池田に行きたい、と思うようになった。その結果が全国制覇にもつながった。しかし公立校に関しては、校区という制度がある。今、甲子園の強豪校の多くが私学。校区の縛りがないので越境留学もできるから、良い素材をどんどん集められる。これは現状の制度だからしょうがない」

「今は校区内の生徒を大事にすることが大事。中には家から少し距離がある生徒もいる。登下校だけで疲れてしまう。公立校だから勉強もしなければならない。生徒が時間を大事にできる環境を作ってあげたかった。そういった生徒は全部受け入れてあげたい気持ち」

 かつての黄金時代に至った経緯を知っている。その後の勝てない時期も見続けてきた。現状のシステム下で不利なのはわかっているが、それでも夢があるから支えている。

「徳島で勝つんじゃなく、甲子園で勝つチームを作って欲しい。他県の強豪校と比べると池田の子は身体が小さい。県内でも徳島や鳴門は身体がしっかりしている。まぁ個人的考えだけど、海が近いから子供の頃から魚をずっと食べているのかなぁ。その辺も課題の1つだと思う」

「昔から良い選手というのは常に余裕がある。水野雄仁なんて練習中に見に来た客と軽口言い合ってた。『今日は風邪っぽくて身体が重いから2本しか打てんわ』って言いながら3本打った。余裕があるから試合中も相手をのんでかかっている。身体も大きかったし、これはスゴイ選手になると思ったね」

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「今の井上力監督の野球は…」