4月中はスタメン出場が多かったが、打率は1割台が続く。その間にドラ1ルーキー辰己涼介がチャンスを与えられ、結果を残してポジションを奪われる形となった。その期間もしっかり準備は続けていたが、これまでの野球生活において経験のない代打、戸惑いも大きかった。

「代打で結果を出さないといけないのはわかっていた。準備もしていたけど全然違う。1打席に向けての技術的、精神的な持っていき方というか……。代打で結果を残している渡辺直人さんなどは本当にすごい、と思った。代打の準備もわかり始めてきた頃、下半身の違和感を覚えた。それで自分のスイングもできなくなった」

 恵まれた身体能力には定評がある。周囲から見ていると、打撃では身体全体を使って強いスイングをしているように見える。特に上半身の力強さが伝わってくる。しかし、本人は下半身しか意識していないという。

「上半身に頼ってスイング、と見られがちですが、下半身しか意識はない。下を強く使ってその力が上半身に伝わる。上半身は自然に使えているという感覚。だから下半身に違和感があって、強いスイングをすることができなかった。そのうちに変な部分にも力が入って打撃全体のバランスも崩れ始めた」

 トータル的に判断され6月10日に登録抹消、その後は二軍生活が続く。しかし調整だけでなく、代打や守備への向き合い方など様々な気づきもあった。結果も出せており、一軍再昇格に向けてさらなる準備を重ねる毎日だ。

「下半身も万全になり、自分で納得できるスイングも戻ってきた。色々な人に話を聞くことができて、代打に対する心構えや準備も変わってきた。一軍に上がった時にはどんな形でも戦力になり結果を残したい」

 福井も環境が変わったことで新たな刺激を受けている。

「二軍では佐藤義則コーチと話せる時間ができたことは大きい。色々な経験を聞くことができて勉強になる。ここまで3勝を挙げているけど、満足はまったくない。1つでも多く勝って、二桁にも近づきたい。個人的には今年1年で少しでも多くのことを身につけて、何年も結果を残せる投手になりたい。長い期間、楽天のために結果を出せる投手になりたい」

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ドラフト1位の看板に向き合えるように