広島時代晩年は、目先のことにこだわり過ぎていた。結果が出ず登板機会が少なくなると、やるべきことに迷いも生じ分からなくなった。しかし現在の福井は前だけを見ている。微かながらも眩い光がはっきりと見えている。

「SNSとかを通じて色々と言われる。正直、腹が立つこともあるけど、それは自分のせいなのもわかっている。言葉は適切じゃないかもしれないけど、見返してやろう、という気持ちしかない。だから見ていて欲しい、としか言うことはない。そうすればチームにも貢献できるし、ファンの人たちは絶対に喜んでくれる」

　高級車の購入、奇抜な髪型など、オコエは野球以外のことで話題になることが多かった。結果が伴わないため厳しい意見があり、それらを直接目にすることも多い。ただ、そんな逆風下でもオコエはいつも笑顔を絶やさない。現実から目を背けない。

「ドラフト1位入団」という看板は一生ついてまわる。これまでも多くの逸材がその重荷に潰れてきた。しかしそれらと真っ向から対峙し、なんとか前に進もうとしている。

　2人のキーマンが楽天生命パークに戻ってきた際は、これまでと違う姿を見せてくれるはず。その時にチームがどういう戦いをしているのか、楽しみで仕方ない。（文・山岡則夫）

●プロフィール
山岡則夫
1972年島根県出身。千葉大学卒業後、アパレル会社勤務などを経て01年にInnings,Co.を設立、雑誌『Ballpark Time！』を発刊。現在はBallparkレーベルとして様々な書籍、雑誌を企画、編集・製作するほか、多くの雑誌、書籍やホームページ等に寄稿している。Ballpark Time！オフィシャルページにて取材日記を不定期に更新中。現在の肩書きはスポーツスペクテイター。