■師匠・談志のような鋭いコメントを局側は期待?

 一方で、志らくの師匠は元祖・毒舌落語家の立川談志(2011年没)である。談志は00年代以降、積極的にテレビやラジオで時事問題に関してコメントし、その過激な発言がたびたび話題になった。志らくは、落語だけでなく、こうした部分でも談志のDNAを引き継いでいくのだろうか。

「談志さんも時事問題に対しても鋭い意見を飛ばし、的確なコメントをしていましたよね。また、筑紫哲也さんや小室直樹さん、西部邁さんなど左右を問わず親交があり、人脈の広さから来る博識ぶりにも定評がありました。しかし、今見ている限りでは志らくさんに師匠ほどの思想や人脈の豊富さはあまり感じられない。SNSに精通し落語家として一定層が喜びそうなコメントを放っているだけという印象があります」(前出の編集者)

 報道の通り、もし志らくがMCに正式に決定したら、もうひとつ別の懸念もあるという。

「テレビでコメンテーターをする芸人さんは、本業の芸に影響が出ちゃうんですよね。とくに毒舌芸は高座やツイッター、インタビューなどで発揮されるもの。テレビ番組のレギュラーともなるとスポンサーの顔色もうかがわないといけない。また、毎日の放送でなまじ視聴率がよくなると、自分がしゃべりたいように台本をつくり、ほかの出演者に話をふるだけとなってしまいます。そうなると、本業もMCも共倒れ……となるケースも考えられます。スタッフも疲弊しますし、結果として落語から貴重な人材がいなくなってしまうということも懸念されるのです」(放送作家)

 一方、TVウォッチャーの中村裕一氏は、志らくのMC起用について好意的に見ている。

「少々、斜めに見るとしたら、志らくさんの歯に衣着せぬコメントを持て余した『ひるおび!』が止むを得ず放出した、と見ることもできます。しかしながら、常に刺激を追い求めるワイドショーにおいて、短い時間でストレートにモノを言える人材はとても貴重なので、MCになったとしても存在感を示してくれることでしょう。志らくさんには落語という表現の場がすでにあるので、視聴者の反応をあまり気にせず自由に発言できるのだと思います。そもそも落語家は社会問題や政治に対して文句を言ったり、毒を吐いたりしてなんぼの職業。昼から朝に舞台が移ったとしても、そのコメントの鋭さはおそらく変わらないでは。むしろパワーアップして切れ味を増したコメントを毎朝、聞きたいですね」

 新たな毒舌MCの参戦は果たして実現するのか。(今市新之助)